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<震災6年 まち再生>住宅拡散事業頼み限界

<安全性重視>
 東日本大震災の被災地で土地区画整理事業が長期化する中、区域を離れた被災者はどこに自宅を再建したのか。動機は何か。神戸大大学院の近藤民代准教授(居住環境計画)らは東北の被災地で調査し、住民が安全を求めて早期移転する傾向や、被災した既存市街地から住宅が拡散する実態をまとめた。「行政の市街地整備事業には限界がある。個人の再建を誘導する政策が必要だ」と提言する。
 近藤准教授は2014年、名城大の柄谷友香教授と共同で、岩手、宮城両県沿岸9市町の住宅地図(12〜14年発行)のデータなどを基に新規着工建築物の分布を分析した。その結果、内陸部で市街地形成を図る宮城県石巻市などでは既存の宅地に新たな建物が建つ一方、中心部の浸水域をかさ上げして区画整理する岩手県陸前高田市では、市街地外に分散する傾向が顕著だった。
 移転再建者に対する調査では、回答した310世帯のうち46.4%が震災から半年以内に移転を決めた。理由(複数回答)は61.9%が「津波への不安」、46.8%が「事業の長期化」を挙げた。選定の理由は「津波の危険性が低い」が73.9%、「買い物に便利」(27.1%)「手頃な土地価格」(26.8%)など。
 近藤准教授は「市街地の安全性に対する行政と住民の認識の差も影響しているのではないか。金銭的な問題以上に、安全のために移転した人は多い」とみる。

<情報共有を>
 行政主導の市街地整備事業は必ずしもけん引力になっておらず、「事業頼みの復興には限界がある」と指摘。人口が減少する中、市街地が広がり低密度化した都市は持続が難しくなるとし、「拡散した住民が利用できる公共交通などを充実させ、中心部活性化を図る必要がある」と訴える。
 市街地の拡散を防ぎ、個人の再建を誘導するため、「被災者各自の再建意向について、早い段階から行政や地権者同士で情報を共有できる仕組みがあれば、事業を待てる方向になったのではないか」と話す。


2017年03月08日水曜日


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