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<震災6年>9日後救出の男性 古里再生の夢

卒業展示で披露した作品の説明をする阿部さん

 東日本大震災の発生から9日後、宮城県石巻市の倒壊した家屋から救出された東北芸術工科大彫刻コース4年の阿部任(じん)さん(22)が20日、同大を卒業する。地元・石巻のまちづくり会社に就職する予定で、大学で学んだ美術工芸を古里の再生に生かそうと思いを新たにしている。
 阿部さんは2011年3月11日、通っていた東北生活文化大高(仙台市泉区)が休暇で実家に帰省中、津波に襲われた。祖母と2人、壊れた家で飢えと寒さをしのぎ、20日に救出された。
 大学進学後、友人から震災について尋ねられることがあった。体験したことをありのまま話すと、「聞いてまずかったかな」という表情に一変した。
 「もっと大変な思いをした人はたくさんいる」「そんなに深刻に受け止められても…」。前向きに人生を歩み始めていたからこそ、正直、困惑した。
 就職先はまちづくり会社「街づくりまんぼう」に決まった。故石ノ森章太郎さんの作品を展示する石ノ森萬画館の運営や震災復興イベントを手掛ける会社だ。
 就職活動では、東北や関東圏のデザイン会社など約20社を受けた。しかし、結果は芳しくなく、気付けば秋になっていた。採用情報をインターネットで探していた時に目に留まったのが、社員を募集していた街づくりまんぼうだった。
 石ノ森萬画館は小学生の頃からよく通っていた思い出の場だ。「この会社で力を発揮してみたい」。面接の結果は合格。将来の道筋が見えた希望と地元に帰れるという安心感で、ふっと肩の力が抜けた。
 大学生活の集大成となる卒業展示が2月7〜12日に東北芸工大であり、1年がかりで制作した工芸作品「Breath of souls」を披露した。廃材から調達したねじや歯車などを組み合わせ、羽化したチョウに見立てた。「生命の息吹を表現したかった」。多くの人から作品を評価され、自信につながった。
 大学生活を終える寂しさはある。ただ、4月の入社を控え、地元の復興に携わりたいという気持ちは日に日に高まる。津波で流された実家の跡地は、国などが整備する復興祈念公園になる。「何らかの形で事業に関われないだろうか」。夢は膨らむ。


2017年03月10日金曜日


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