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<むすび塾>原発災害ストレス心の発達に影響懸念

筒井雄二(つつい・ゆうじ) 学習院大大学院人文科学研究科博士後期課程単位修得退学。同大助手、福島大助教授、准教授を経て10年から現職。同大災害心理研究所所長。専門は実験心理学、災害心理学。埼玉県出身。52歳。

◎福島大教授 筒井雄二さん

 東京電力福島第1原発事故による深刻な被害は多方面に及ぶ。中でも私が注目してきたのは原発事故が引き起こす心の健康問題だ。
 1986年のチェルノブイリ原発事故について、世界保健機関(WHO)など国連機関は、事故による最大の公衆衛生上の問題は心の健康被害だったと指摘した。
 私たちのグループが2015年にチェルノブイリ事故の被災者を対象に行った調査では、事故による心理的影響が今も続いていることが分かった。
 では、原発事故はいったいどのような心の問題を引き起こすのか。
 福島第1原発事故の直後から、私たちは福島市や郡山市といった避難指示の出ていない福島県内の市町村住民を対象に、心理的影響を調査している。
 調査の結果、空間放射線量が上昇した地域で暮らす人々に、放射線不安と「気分が落ち込む」などの心理的ストレスが強く現れた。低線量被ばく地域で暮らすことへの恐怖や不安は簡単には払えないといえる。
 また、白石市、丸森町、角田市など宮城県南部も空間放射線量が上昇した地域であり、これらの地域では福島県と同様の問題が起こっている。
 放射線不安や心理的ストレスは特に母子に強く現れ、事故後に生まれた子どもにも及ぶ。
 30年以上も、チェルノブイリ事故が被災者の心に影響を与えているのだから、福島事故による心の影響が長期にわたって続く可能性は当然、考えられる。
 福島県や宮城県南部で暮らす母子は、原発事故に起因する不安やストレスに既に6年もさらされている。これほど長期間、不安やストレスにさらされ続けた場合、人間はいったいどうなってしまうのか。
 私たちの調査では、1歳半の子どもにも「親から離れられない、後追いが激しい」などのストレス反応が確認されている。
 幼少期に、ストレスを抱えた親とうまく愛着関係が形成できないと、情緒のコントロールや社会性の発達でつまずく恐れもある。
 最も警戒しなければならないのは、長期間にわたる原発事故由来の心理的影響が、子どもたちの心の発達に影響を与える可能性だ。
 人間の心はそれほど弱くはないという人がいる。しかし、皆がそうとは限らない。少なくとも6年間、人々は原発事故からの不安やストレスを解消できていないのである。


2017年03月13日月曜日


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