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<むすび塾>津波防災 83%対策している

福島県沖地震の発生直後、津波の到達に注意を呼び掛けて回る消防車=昨年11月22日午前6時20分ごろ、気仙沼市魚町
福島県沖地震による津波で漁船が転覆するなどの被害が出た=昨年11月22日午後2時30分ごろ、東松島市宮戸

 河北新報社は、東日本大震災で被災した宮城県南三陸町歌津の寄木(よりき)地区での「むすび塾」開催に伴い、住民の津波防災意識を探る調査を実施した。今後起きる地震や津波に備えて対策をしているとの回答が83.1%と意識の高さがうかがえる一方、実際の備えに不安を感じている人も55.9%と半数を超え、課題があることを示した。
 質問は全7項目で主な結果はグラフの通り。回答者59人のうち、地震・津波対策をしていると答えた人は49人だった。具体的な対策として「食品、日用品の備蓄」(31人)「避難経路」(18人)を挙げる人が多い。「車に毛布や水、カイロを積んでいる」「沿岸を移動中は常に高い場所や建物を意識している」との記述があった。
 在宅中の避難場所について「決めている」が78.0%、「決めていない」は13.6%。場所は「高台にある自宅」が52.2%と最も多く、「自宅以外の高台」26.1%、「指定避難所など」19.6%と続いた。
 今後の備えに「不安がある」と回答した人には「避難経路」(18人)を挙げる人が多く、「仕事先の海岸からの避難道路が必要」「高台に車で行ける避難道路があればいい」との声が目立つ。
 震災に関しては、日常生活で「毎日」「時々」振り返るとの回答が計83.1%を占めた。「ほとんど振り返らなくなった」(10.2%)と答えた人の多くが、30〜50代の働き盛りの男性だった。
 震災直後の行動は「避難した」が64.4%で、その多くが車で避難したと回答。比較的スムーズに高台に行けた人がいた半面、道路の陥没や橋の崩落現場に遭った人もおり、明暗が分かれた。
 調査は2月上旬、寄木行政区と一般社団法人「さとうみファーム」の協力を得て実施。住民54人とファーム従業員5人の計59人が回答した。

◎高台移転後の安心感注意

 昨年11月に起きた福島県沖地震で宮城県沿岸部に津波警報が出た際の対応では、「避難した」が11.9%だったのに対し、「避難しなかった」が62.7%に達した。回答者の多くが地震発生時、高台に移転した自宅におり「津波の心配はない」と判断したとみられる。
 当時いた場所を尋ねると、74.6%が「自宅」と回答。「職場」(6.8%)、「県外」(3.4%)などと続いた。
 避難しなかった人のうち91.9%が当時の居場所を「自宅」と答えた。「高台に家を建てたので津波の心配はないと思い、自宅でテレビの報道を見ていた」との記述もあり、海抜40メートル超の高台への移転が一定の安心感をもたらしている現状が読み取れる。
 東北大災害科学国際研究所の今村文彦所長は「家が標高どのぐらいにあり、津波の予想高はどれだけかをきちんと把握しての判断だったのかがポイントだ」と指摘。「高台だから安心と思い込むのは危険な場合もある。居場所の状況を常に意識したい」と注意を促す。
 今村所長は、ニュースを通じて多くの人が正確な情報収集に努めていた点に注目。「油断せず、状況を注視し続ける姿勢は重要。海辺に暮らす住民らしく落ち着いた対応だった」と評価した。

<津波防災意識調査の主な回答から>
【災害への備え】
・常備品、水、懐中電灯。寒い時には防寒着、救命衣を車に積んでいる。震災の教訓から屋内につるせる灯油のランタンも準備した(女性 80歳)
・ソーラー発電機。ガソリンは満タン。電池の買い置き。車には羽織るものを用意(女性 40歳)
・自分や家族がいつも活動している場所から避難できる場所を話し合っている(男性 36歳)
・緊急用の上着や食料を備蓄。普段からかばんにはライターや布類、ナイフなどを入れている。外出先では非常口の場所などを把握(男性 29歳)
・未来を担う子どもたちに日頃から「気を付けろ」と伝えていくことが一番の備え。一人でいても、高い所へ逃げること(女性 87歳)
・家族で話し合い、一人一人が各々高い所へ逃げると決めている(女性 39歳)
・畑で野菜を作り、困ったときはみんなで提供し合う心構え(女性 77歳)
・数日間過ごせる食料や水の備蓄、停電への備え、トイレ対策。車には常に毛布、水、カイロなどを積み込んでいる(女性 52歳)
・沿岸部を車で走行中は津波到達地点を確認しておく。復興工事で道が頻繁に変わるため、スムーズに避難できるよう、その都度把握しておく(男性 25歳)
・沿岸部を移動中は、常に高い場所や建物を意識している(女性 30歳)

【備えに対する不安】
・海岸に防潮堤ができていないこと。自然の力は無限だということを知らなければならない(男性 73歳)
・家族が毎日薬を服用しているので、病院からの薬がなくなった場合が不安だ(男性 66歳)
・避難道路の未整備。震災前よりも不安な気持ちで生活している(男性 73歳)
・高台に家を建てたが、盛り土なので地震の揺れが心配(女性 81歳)
・作業場にいると防災無線が聞こえず、携帯電話も通じにくい(男性 51歳)
・海岸で仕事をすることが多いので、近くの山へ登る広めの避難道が欲しい(女性 62歳)
・高台に移ったので、今は地震や津波よりも火災が不安(男性 81歳)
・海岸からの避難道路。復興を伝える報道は多いが、現実にはまだまだ舗装されていない道がいっぱいある(男性 51歳)
・海岸で仕事をしている人が、川沿いの道を通らずに高台へ車で行ける避難道があればいい(女性 75歳)


2017年03月13日月曜日


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