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<台風10号>楽ん楽んの惨劇 遺族ら写真展

八重樫さんが撮影した被災直後の楽ん楽ん内部。壁には水位を示す泥の線がくっきりと残る=2016年9月8日午後1時55分ごろ
八重樫 信之さん

 昨夏の台風10号豪雨による洪水で、入所者9人が死亡した岩手県岩泉町の高齢者グループホーム「楽(ら)ん楽(ら)ん」の被災直後の様子を伝える写真展「岩泉台風10号の記憶」が25日、盛岡市のもりおか町家物語館で始まる。施設で母親が犠牲になった埼玉県の写真家八重樫信之さん(73)の作品を中心に計26枚を展示する。
 八重樫さんは台風10号が岩手に上陸した昨年8月30日、楽ん楽んに入所していた母チヤさん=当時(95)=を亡くした。
 大学進学で岩泉町の実家を出た八重樫さんは、チヤさんと50年以上別々に暮らした。毎年必ず帰省し、孫の顔を見せるのが楽しみだった。チヤさんが2011年4月に入所してからは会いに行く回数を増やした。
 八重樫さんは遺骨を引き取った昨年9月5日以降、楽ん楽んの解体が始まった今年1月まで計5回、岩泉町に入った。「母が暮らした施設の惨状と町の復旧を記録するのが仕事」とシャッターを切り続けた。
 写真展では水位を示す泥の線が残る施設内部、土砂に埋もれた民家、がれきを片付けるボランティアなどを写した19枚を並べる。岩泉乳業の下道勉副社長(59)も協力し、台風から一夜明けた施設周辺や、主力商品「岩泉ヨーグルト」製造用タンクの被災状況を収めた7枚を寄せた。
 八重樫さんによると、楽ん楽んの運営法人は昨年10月、遺族向け説明会を初めて開催したが、チヤさんが亡くなる直前の状況報告や誠意ある謝罪の言葉はなかった。他の遺族と再度の説明会開催を申し入れたが、被災から半年以上たった今も実現していない。
 八重樫さんは「母が助かる方法があった気がして、いまだに納得できない。写真展には、大災害を風化させたくないという願いはもちろん、法人に対して遺族の無念を忘れるなというメッセージも込めている」と説明する。
 写真展は岩泉町でボランティア活動をした東日本大震災の被災者支援団体「SAVE IWATE」(盛岡市)などが主催。初日は八重樫さんと下道さんが対談し、遺族の思いや町の復興状況を語る。
 4月2日まで。午前10時〜午後6時半。28日は休館。入場無料。


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2017年03月22日水曜日


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