岩手のニュース

被災児童見守り6年 校長が定年退職

卒業式を終え、笑顔で児童を祝福する木下校長(左)。「一歩踏み出す勇気を持ち、自分の可能性を広げてほしい」と願う

 東日本大震災の発生直後から陸前高田市の高田小に着任していた木下邦男校長(60)が31日、定年退職する。学区の市中心部は壊滅的被害を受けた。自分ではどうすることもできない事実に直面した子どもたちに学校は何ができるのか。自問しながら歩んだ6年間だった。
 「みんなはどんなにつらいことがあっても、その現実に向き合ってきました」。17日の卒業式。木下校長は脳裏に6年前の出来事がよみがえり、声を詰まらせた。
 2011年4月下旬、慌ただしく迎えた始業式や入学式。児童は100人ほど減り、約330人になった。58人が親を失い、大半の自宅が流された。市内にある木下校長の自宅も流失した。「あるがままを受け止めよう」と教職員に伝えた。
 児童たちは明るく、元気だった。つらさの奥底にある気持ちは見えない。ただ、前に進もうとする子どもの力を感じた。普段通りの学校生活の積み重ねが成長につながると信じた。
 運動会はしばらく児童と保護者で別々に昼食を取った。「親を失った子が1人でも嫌な思いをしないように」と考えたからだが、気遣いを負担に思わないかと心配もした。何が正しいのか本当に分からなかった。
 同校では児童7人が死亡、行方不明になった。震災から約1年後、卒業生も含め、学年単位で亡くなった仲間の墓参りに出掛けた。「自分たちの心の中で生き続ける」。大人になっても向き合える場所があると知ってほしかった。
 校長室には今も7人の写真を飾っている。せめて、ここにいた証しを残したかった。今後も引き継いでもらいたい。
 校舎から見える市中心部はかさ上げされ、一部で商業施設の建築が進む。これからどんな景色になるだろう。「素晴らしい街をつくるため、子どもたちにその主役になってほしい」


2017年03月31日金曜日


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