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<民泊>訪日客と課題つなぐ

小笠原さん夫妻(左)方で手作りしたおはぎを食べるアダムスさん(右)と和山さん。民泊の普及がインバウンドの取り込みを加速させる=3月19日、釜石市内

 直面する課題と技術、仕組みが結び付き、新しい価値を生む。イノベーションの端緒が被災地にあった。革新をもたらすCSRが復興を後押しする。
(「被災地と企業」取材班)

◎トモノミクス 被災地と企業[32]第6部 革新(4)むかえる

 2020年東京五輪・パラリンピック、19年のラグビーワールドカップ(W杯)を控え、宿泊施設不足を打開する切り札として注目される民泊。訪日外国人旅行者(インバウンド)を迎え入れ、復興につなげる動きが被災地で広がる。
 山あいの民家の台所で、外国人女性2人が笑顔でおはぎ作りに励む。
 「あんこで全部を包まない方が甘さのバランスがいいのよ」。釜石市の主婦小笠原良子さん(65)が手際良く手本を見せた。
 2人は3月19日、外国人向けモニターツアーに盛岡市から参加し、小笠原さん方に泊まる。宿泊の「体験料」は1泊6100円。
 外国語指導助手のベッキー・アダムスさん(27)=英国出身=は「日本家屋の雰囲気を満喫できた」、日本人男性と結婚した和山アマンダさん(30)=米国出身=は「地域文化を知るきっかけになった」とそれぞれ民泊の醍醐味(だいごみ)を語った。

 東日本大震災で人口減少が進む釜石市。市は農山漁村の暮らしを体験する「農家民泊」を推進する。2015年度は延べ28人、16年度は2月末までに74人を受け入れた。
 同市はW杯の開催地の一つ。市は16年10月、米国の世界的な民泊企業エアビーアンドビーと民泊推進の覚書を結んだ。期間中に予想される宿泊施設不足を補う狙いもある。民間と連携して取り組むモニターツアーは同社サイトで予約を受け付け、市内の3世帯が6人を受け入れた。
 「農泊は引きこもりがちな高齢者の社会参加につながり、お金も稼げる。エア社との連携を地域課題の解決につなげたい」。ツアー実行委員会事務局の久保竜太さん(33)は意欲的だ。

 旅館業法に抵触するため、民泊ができるのは釜石のような農泊や国家戦略特区に限られる。営業許可を受けない「ヤミ民泊」が横行したこともあり、政府は3月10日、民泊を本格解禁する住宅宿泊事業法案(民泊新法)を閣議決定した。
 法整備を訴えてきた仙台市のベンチャー企業、百戦錬磨の上山(かみやま)康博社長(55)は「新法は都市部より地方のメリットが大きい」と期待する。同社は民泊予約サイトを運営。インバウンド拡大によって、長期滞在に向く別荘や空き家の需要が高まると予想する。
 同社のサイト「ステイジャパン」は認可を得た民泊だけを掲載し、東北を含む約500の物件を扱う。
 上山社長は農泊の産業化にも力を注ぐ。農協観光と連携し集客支援や体験メニューの充実に着手。「地域にお金が回れば、わが社も成長できる」と確信する。
 インバウンドがもたらす商機を、人口減や高齢化といった課題と結び付ける。地域の持続を願う民意が仕組みづくりを促し、社会性を帯びた商いの芽が育つ。


2017年04月06日木曜日


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