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津波犠牲545人の「生きた証」語り継ぐ

完成した回顧録「生きた証」

 東日本大震災で関連死を含む1285人が犠牲になった岩手県大槌町による故人の人生や被災の状況を記録した回顧録「生きた証(あかし)」が完成した。遺族らへの聞き取りを終えた約650人のうち、公表に同意した545人分を掲載。自治体による前例のない取り組みで、専門家は「防災上も重要な意味がある」と指摘する。
 回顧録はA5判1047ページ。1人当たり2ページを使い、生前の歩みや被災時の行動、遺族や知人の思い出、故人へのメッセージを顔写真と共に紹介した。
 大槌町の「生きた証プロジェクト」は2014年度に始まった。岩手大に業務を委託。調査拒否や態度保留を含めて1019人分の遺族らに接触したが、目標とした15年度の完成が大幅に遅れていた。
 町は岩手大との契約を終了し、16年度は町民有志が中心になって作業を進めた。プロジェクトには多くの遺族が協力し、ほかの遺族と調査員の橋渡し役を務めた。
 50年以上連れ添った妻ケイさん=当時(74)=を亡くした保育園理事長東谷藤右エ門さん(83)は「寂しさや悲しみは決して消えないが、聞き取りに対し女房の思い出を2時間も3時間も話すことで改めて心の中に一緒にいると感じた。記録に残し、忘れないことが供養になる」と語る。
 日本災害情報学会理事で減災・復興支援機構の木村拓郎理事長によると、近年の自然災害で自治体が大規模に犠牲者個人の記録をまとめた例はないという。
 木村理事長は「故人の思い出を語り継ぎ、町民で共有する新しい形式の伝承だ。災害で犠牲が出ることの悲しみが伝わり、防災意識を高める。遺族にとっても気持ちの整理につながるのではないか」と評価する。
 回顧録は遺族に配布し、希望者には2000円で販売する。第1版の位置付けで、聞き取りを続けて第2版の刊行を目指す。購入方法など連絡先は町公民連携室0193(27)8168。


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2017年04月07日金曜日


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