岩手のニュース

<2011年3月生まれ>笑顔が集まる桜のように

入学式の後、教室で笑顔で語り合うさくらさんと悦子さん=宮古市

 「学校では国語が楽しみ。算数も頑張る」
 岩手県宮古市千徳小に10日、入学した下沢さくらさん(6)。妹(4)と弟(1)が生まれ、積極的に家のお手伝いをするようになった。将来の夢は「パン屋さん。お母さんに、一番に食べてもらいたい」。
 宮古市中心部の病院で産声を上げた。大きな揺れが病院を襲ったのは、その27分後だった。
 「津波が来る!」。看護師に促され、母の悦子さん(38)は出産後のもうろうとした意識のまま、生まれたばかりのさくらさんと3階に逃げた。
 津波の被害は受けなかったものの、病院は停電で暖房が停止。ろうそくの灯だけで一晩を過ごした。
 予定日より約2週間早く生まれた2610グラムの体は、寒さでみるみる紫色になっていく。悦子さんは必死にさくらさんを抱きしめ、夜を明かした。
 あの寒い日に生まれた。だからこそ厳しい冬の後で見る人を元気づける桜のように、周囲を明るくしてほしい。「さくら」と名付けた。
 震災で街が壊れ、大勢の人が亡くなった。悦子さんの母で祖母の木村たえ子さん=当時(58)=も津波の犠牲になった。
 「私が生まれた日は、地震と津波があった日なんだね」と話していたさくらさんが最近、震災の話を嫌うようになった。
 「みんなから『大変だったね』と言われるのが嫌になったのかな」と悦子さん。それでいい。心が成長している証しだから。「いつか自然体で震災のことを話せるようになってほしい」と願う。
 多くの人に助けられながら小学校入学の日を迎えた。「大きくなったら、今度は弱い人や困っている人に手を差し伸べられる人になってね」。悦子さんが優しく語り掛けた。


2017年04月11日火曜日


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