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災後生まれ今春就学 被災と教訓どう伝える

震災後、定点撮影した地域の写真などが並ぶ震災伝承室=宮古市鍬ケ崎小

 東日本大震災や東京電力福島第1原発事故の発生後に生まれた子どもたちが就学期を迎え、児童らに被害と教訓をどう伝えるか、被災地の学校関係者が模索している。校内に新たに伝承室を設けたり、副読本を活用したりする動きもある。震災から7年目になり、実体験や記憶のない児童が増え始めることに伴い、学校の防災教育は大きな転換期に差し掛かっている。(震災取材班)
 津波で被災した宮古市鍬ケ崎小は3月、校内に「震災伝承室てんでんこ」を設置した。震災前から現在までの地域の写真などを展示し、今の街の風景が語る意味を伝える。
 開設に携わった北田正・前校長(60)は「震災のイメージのない子たちには、いかに視覚的に学んでもらうかが大事」と強調。これまでは被災児童に配慮し、津波の映像を見せることは避けてきたが「これからの子には映像を含め、実態を見てもらうことも必要になる」と指摘する。
 陸前高田市小友小も、視覚に訴える工夫を凝らす。児童と教員は毎年、チューリップの折り紙に名前を書き、高さ1.6メートルの津波が押し寄せた校舎1階廊下の壁に貼り付ける。津波の事実や避難の必要性を伝えるのが狙いだという。
 震災が起きた2011年3月11日以降の「災後生まれ」の子が4月、初めて小学校に入学した。震災から7年目に入り、記憶の風化の危機は、他の被災地でも足元に迫っている。
 宮城県教委は「今の小学3、4年生でさえ、震災はうろ覚えの子が多い。関心を持たせる工夫が必要」と説明。13〜15年度、幼児・小学生向け副読本を刊行し、17年度は津波から身を守る方法などを漫画でまとめた学習本を作製する。
 原発事故の影響が続く福島県は、放射線の基礎知識や避難の現状を学ぶことを重視する。生まれてからずっと避難先で生活してきた子どもたちも今春、小学生になった。県教委の担当者は「自分の古里や、なぜ避難しているのかを説明できる力が必要になる」と言う。

 災害経験の継承を巡っては、発生から22年たった阪神大震災の被災地の活動が先行する。兵庫県教委は震災から5年後の2000年、教職員による「震災・学校支援チーム(EARTH)」を設立。学校の防災教育をサポートし、災後生まれの子どもたちが、体験者の話を基に自ら震災を語り継ぐ活動に力を入れる。
 3月まで同チーム学校教育班長を務めた同県舞子高の和田茂教諭(58)は「時間の経過に合わせ、伝え方を転換する必要がある」と助言。「体験がないからこそ、被災者や支援者の気持ちを客観的に想像できる面がある。体験者がいなくなる将来を見据え、語り継げる人材を育てる視点が大切だ」と訴える。


2017年04月23日日曜日


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