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<アバッセ開業>思い継ぎ再起の一歩

アバッセ内に開店した「伊東文具店」で従業員らと談笑する伊東さん(左)

 東日本大震災から6年以上の歳月を経て、ようやくスタートラインに立った。「笑顔があふれ、活気みなぎる街にしたい」。陸前高田市の中心市街地に商業施設「アバッセたかた」が開業した27日、高田松原商業開発協同組合代表理事の伊東孝さん(63)は、犠牲者の無念を胸に決意を新たにした。

 お祝いムードに包まれた記念式典。その中に、深くこうべを垂れて黙とうする伊東さんの姿があった。
 家族で営む書籍文具店が創業50年を迎えた6日後、市内にあった二つの店舗を震災で失った。二人三脚で商売を切り盛りしてきた弟の進さん=当時(54)=、進さんの妻富美代さん=同(53)=、おいの進太郎さん=同(28)=、女性従業員が津波にのまれた。
 進さんは生前、地元商店街の理事長で地域の世話役だった。店を継ぐはずだった進太郎さんは仲間たちと、どうしたら街が元気になるかを語り合っていた。
 失意を胸の奥に閉じ込め、目の前のことに没頭した。
 震災翌月の2011年4月15日、高台のプレハブ仮設店舗で営業を再開。狭い店舗に最初に置いたのはノートや鉛筆の学用品だった。学校の再開を控え、全てを流されて子どもたちが困っているだろうと思った。
 たとえ不十分な品ぞろえでも、子どもたちは目を輝かせ、夢中で商品を選ぶ。「震災前は、お客が大事と言いながら売り上げのことばかり考えていた。店は地域に必要とされていると子どもたちに教えられた」
 電池、針、蚊取り線香…。客から要望のあった品は何でも置いた。「本が読みたい」という声に応えて書籍部門を再開、さらに仮設店舗を移転、拡張した。
 アバッセに入る新店舗は約260平方メートルの広さで、書籍の品ぞろえも充実している。併設する市立図書館と絵本の読み聞かせなどで連携し、人々が集う場にしたいと願う。
 震災で陸前高田商工会は、会員事業主の約20%に当たる138人が犠牲になった。壊滅した中心市街地で亡くなった仲間も多い。その地で、伊東さんと商店主たちが再起の一歩を踏み出した。


2017年04月28日金曜日


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