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<熊本の教訓>民のノウハウ生きる

トラックに荷物を積み込むフォークリフト。熊本地震では大量の政府調達物資を企業がさばいた=20日、佐賀県鳥栖市の日通鳥栖流通センター

 熊本地震の発生から1年が過ぎた。混乱を極めた被災地で、企業は支援活動の中核を担った。東日本大震災で芽生えた復興CSR(企業の社会的責任)。その意義は重みを増し、九州で生きた。(「被災地と企業」取材班)

◎トモノミクス 被災地と企業[34]第7部 物流(上)さばく

 両端が口を開けたアーケード型の倉庫に、大型トラックが続々と吸い込まれる。待ち構えていたフォークリフトが、せわしく荷物を積み降ろしする。
 佐賀県鳥栖市の日本通運鳥栖流通センター。熊本県を中心に2度の最大震度7が襲った昨年4月の熊本地震で、政府調達物資の集積拠点となった。
 県は4月14日の前震で市町村に食料や水を放出した。2日後、本震が発生。県内の避難者は想定を超える約18万人に膨れ上がった。
 「スーパーやコンビニは物資を要請してから到着するまでタイムラグがある。交通網は寸断され、対応に頭を抱えた」。県健康福祉政策課長の野尾(のお)晴一朗さん(53)は振り返る。

 菅義偉官房長官は本震発生の夜、自治体の要請を待たずに政府調達物資を送る「プッシュ型支援」の実施を表明した。東日本大震災を教訓に改正された災害対策基本法に盛り込まれ、企業の役割が明確に位置付けられた取り組みだ。
 本格化する支援を、さらなる想定外の事態が襲う。
 県が定めた物資集積拠点のグランメッセ熊本(益城(ましき)町)が大規模被災し、使用不能になった。続々と届く膨大な食料品や生活用品が行き場を失う。政府は代替地の確保を迫られた。
 日通は当時、政府の災害対策本部に社員を派遣していた。窮状に接し、鳥栖流通センターの提供を決断。本震の2日後、被災地に食料、飲料を送り出した。
 政府調達物資は日通が食料品、ヤマト運輸は生活用品を主に引き受けた。おにぎりやパンなど品目ごとに運ばれる物資をいったん保管。被災市町村ごとに仕分け、多品目を混載して送り出した。物流企業のノウハウを駆使し、計約250万食が自治体に届けられた。
 現場で総括を担った日通業務部専任部長の丸尾克己さん(49)は「被災県外の物流施設を活用したことで、業務に習熟したスタッフの確保と、円滑な輸送ができた」と成果を語る。

 課題も鮮明になった。
 被災地に届いた物資は末端に行くにつれ、滞った。各市町村の集積拠点は鳥栖からの政府調達物資に加え、民間の支援物資であふれ返った。受け入れ作業や避難所への搬送に必要な人手や車両が不足したためだ。混乱は約1週間続いた。
 「自治体には大量の支援物資をさばくマンパワーもノウハウもない」(野尾さん)。2度の激震は行政の限界を露呈させた。県は今月19日、地域防災計画を改定。物流企業などとの連携を明記した。
 東日本大震災後、自治体が有事に備え、企業を活用する動きが広がる。「物資供給は一分一秒を争う。平時から輸送ルートなどを協議すべきだ」。命をつなぐ物資を迅速に。丸尾さんは企業の社会的責任として、災害対応の進化を期す。


2017年04月30日日曜日


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