広域のニュース

<東北の道しるべ>広がる小規模多機能自治

川北秀人(かわきた・ひでと) 1964年、大阪府生まれ。京大卒。リクルート勤務などを経て、94年社会事業家を支援する「人と組織と地球のための国際研究所」を設立し代表に就任。NPO、自治体、地域組織などを対象にマネジメント講座を開く。

 人口減少や少子高齢化に立ち向かう手だてとして、「小規模多機能自治」が広がっている。従来より広域の地域運営組織が介護予防、子育て支援、自主防災、地域教育など多様な事業を展開。住民は「2枚目の名刺」でそれぞれの役割を担い、総力戦で地域課題の解決に挑む。小規模多機能自治の提唱者で「人と組織と地球のための国際研究所(IIHOE)」の川北秀人代表に現状と課題を聞いた。

◎現状と見通し可視化重要/小規模多機能自治の提唱者川北秀人氏に聞く

 介護から高齢者を見ると、75歳までの前期高齢者で要介護3以上の人は1%程度だが、85歳以上では25%程度にもなる。日本の85歳以上は1995年に150万人だったが、現在は500万人を突破し、2035年には1000万人を超える。
 世話をされる住民が増えれば、地域の在り方も当然変わる。ノスタルジーに浸って行事を続けることは難しく、生活支援事業に取り組まざるを得ない。
 公共サービスは行政だけが提供するとの前提も崩れつつある。「自分たちで何をどこまで担うか」を住民が地域の事情に応じて整理し、決める段階に入った。行政力の限界が地域力の限界になってはいけない。
 自治会は助け合うためにある。祭りも行事も助け合う関係の契機として「人『交』密度」を上げようと行われてきた。しかし地域の年代構成が変われば、やるべきことも変わる。
 小規模多機能自治は、おおむね小学校区単位と言っている。祭りや災害時に避難所などを共有する範囲で、まさに生活圏域だ。
 隣組のような基礎的な自治も続くが、人材育成が必要な防災や福祉に自治会単独で取り組むのは負担が重い。自治体全域では広すぎるし、小学校区程度のサイズがちょうどいい。
 小学校区には目的ごとに多様な団体がある。人口減少で役員のなり手も減り、ほとんどが重複し、1人で10役以上務めている例もある。そんな状態が続けられるはずはない。総会を同じ日に開いたり、各団体の会計を一緒にしたりして、暮らしを守るための活動の時間を捻出した方がいい。
 まずは「人口構成の将来予測」「行事・会議・組織の棚卸し」「中学生以上の全住民アンケート」に取り組むことを勧めている。人口構成の予測は国勢調査データを使えばできる。地域の現状と将来の見通し、住民のニーズを可視化することが大事だ。棚卸しの結果、現役世代から「行事は十二分にある。高齢者の移動支援や子育て支援が必要だ」という声が上がり、動きだした地域もある。
 小規模多機能自治に、決まった形式はない。だからこそ「学び合い」と「磨き合い」が必要だ。先進地の島根県雲南市や長崎市が取り組む「自慢大会」は、その絶好の機会となっている。それぞれの地域が事例を披露することでノウハウを共有でき、「これならわが地域もやれる」と刺激し合える。


2017年05月01日月曜日


先頭に戻る