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<揺らぐ内心の自由>公権力介入 危機感を

水島朝穂(みずしま・あさほ)1953年東京都生まれ。早大卒。札幌学院大、広島大助教授などを経て、96年から現職。専門は憲法学、法政策論。近著は「18歳からはじめる憲法」「ライブ講義 徹底分析!集団的自衛権」

 日本国憲法は1947年5月3日の施行から70年を迎えた。民主主義の根幹を支える「内心の自由」はどこへ向かうのか。早大法学学術院の水島朝穂(あさほ)教授(憲法学)に聞いた。(聞き手は報道部・加藤健太郎)

◎憲法施行70年 インタビュー/早大法学学術院・水島朝穂教授

<副作用は大>
 −国会で「共謀罪」法案の審議が進んでいる。社会への影響をどう考えるか。
 「共謀罪による捜索が報道されれば、逮捕者が出なくても社会を萎縮させ、威嚇する絶大な効果がある。狙いの間口は広い方がいいという議論になっている。国家権力が広範な国民の活動を統制できるような仕組みをつくろうとしている。副作用はあまりに大きいが、現政権には自覚がない」

 −共謀罪は3度廃案になった。再び国会に提案された政治的な背景とは。
 「中選挙区制度で各政党が候補者を立て、支持が分散した。1人を選ぶ現行の小選挙区制度になり、政党の統制権に迎合して意見を言わない議員が増えた。過去に廃案になった時は、自民党内でも戦争経験がある長老が歯止めになったことがあった。権力に余裕がなくなっている」

<健全な感情>
 −地方議会から見送りを求める意見書を出す動きなどが相次いでいる。
 「地方は東京で騒いだ後の負担を強いられた経験が何度もあった。地方創生や農業政策、東日本大震災からの復興もそうだろう。内心の思いを外に出したいという気持ちは地方にこそ強くある。声の封じ込めに使われる不信感が根本にあり、健全な恐怖心でもある」

 −政府は教育勅語の教材使用を否定しないとの見解を示した。「戦前回帰」にも映る動きをどう見るか。
 「教育基本法は教育勅語の否定の上に生まれた。衆参両院は48年に排除と失効確認を決議している。(次期学習指導要領では)銃剣道も入ってきた。2006年に教育基本法を改正したのは第1次安倍政権だ。戦前のシステムを神話的に考える人が政権周辺に多く、内心に向かいつつあるのは危機的状況と考える」

<一つの流れ>
 −「内心の自由」が揺らいでいるとの指摘がある。
 「共謀罪も教育勅語も銃剣道も個別に考えられたことなのに、一つの流れとなってパワーを持ち始めている状況だ。誰か全体のコーディネーターがいるわけではない。それぞれを考える人が前倒し、先回りして介入しようとしている」

 −施行70年の節目に、改めて何を考えるべきか。
 「共謀罪により、あまりなじみのなかった内心の自由が知られるようになった。19条は体系的な思想と主観的な良心の自由を表現している。自分の心に権力が入り込む拒否感に気付くことは重要だ。社会の動きに合わせ、条文と向き合わなければならない」


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2017年05月03日水曜日


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