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内陸被災地は今(下)にぎわい再び

施設が修復された「醸室」。大崎市全体の観光客の入り込み数は、震災前の水準には届いていない=大崎市古川

◎誘客増へ 商店主ら模索/大崎からの報告

 大崎市古川の中心部、十日町の同じ貸店舗に二つの店が同居する。ギターや楽譜が並ぶ楽器店「ソマキ」と、化粧品店「アメニティーハウスTAMANO」。両店は、東日本大震災で被災し、それぞれ市内にあった店舗を失った。
 同じ境遇となり、商工会議所青年部のつながりで旧知の仲だった2店舗は、賃料を分担する形で空き店舗で営業を再開、6年が経過した。

<自社ビルを解体>
 「営業環境は正直厳しい」とソマキ社長の杣木(そまき)智信さん(47)。時計店から始まり、間もなく90年を迎える3代目だが、震災で3階建ての自社ビルが解体に追い込まれた。再開先は手狭で音楽教室のグループレッスンができない。個人レッスンに切り替えたが生徒数は半減した。

 今まで必要なかった賃料の負担も響く。震災後は、復興に伴い音響設備を貸し出すイベントなどに出掛けていくことで、売り上げを補っている。

 TAMANO店長の玉野章浩さん(40)とは同じ3代目ということもあり、互いに助け合う。化粧品を求めに来た女性客が教室へ通い出したり、教室に来た生徒の母親が化粧品を買ったりといった相乗効果も出ている。「街の楽器店の灯を消したくない」と杣木さんは踏ん張る。

 観光・商業施設も打撃を受けた。江戸時代から続いた酒蔵の建物に飲食店や物産館が入る「醸室(かむろ)」。2005年にオープンしたが、震災で屋根や壁が崩れ、壊滅的な損害を受けた。

 「やめるべきだとの声もあった」と酒蔵の8代目で、運営する第三セクター「醸室」専務の佐々木淳一さん(53)は振り返る。

 市の増資を受け、約8000万円かけた修復工事を行い、2年後にフルオープン。現在、震災前を上回る年間約17万人が訪れる。今も空きテナントがあり、順風満帆とはいかないが、佐々木さんは「訪れていただいた方に、街中を巡ってもらえるような好循環を生み出したい」と前を向く。

<ラジオ通じPR>
 震災の年に1割以上落ち込んだ市内への観光客の入り込み数は、回復基調にあるものの震災前の水準には届いていない。震災時にホテルや旅館に沿岸部からの2次避難者約1200人を受け入れた鳴子地区だが「震災前は3割ほどあった沿岸部の客足が遠のいている」(温泉旅館)と影響が続く。

 本年度、市は観光プロモーションに力を入れる。今月4日からは毎週、市のイベントや物産情報を提供するラジオ番組「オオサキユノラジ」をエフエム仙台で放送する。狙いは、震災後も人口増が続く仙台圏だ。
 市観光交流課の藤島善光課長(49)は「まずは仙台圏をターゲットに交流人口を増やしたい。そこから関東圏にもつなげたい」とさらなる誘客増を目指す。

<メモ>古川商工会議所によると、被災した会員企業793社のうち、営業継続は97.4%、廃業は2.6%(16年3月末現在)。大崎市内への観光客の入り込み数は、過去10年で最多の09年が828万4800人。10年が779万3400人で、震災があった11年は688万5600人に落ち込んだ。その後、700万〜730万人台で推移したが、15年は692万人にとどまった。


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2017年05月08日月曜日


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