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<米国の町から>民間の力で再起の礎

鮮やかなピンクのダンプカーの前に立つブルーニさん。「かわいらしさではなく、力強い女性をイメージした色」=4月20日、米ニューオーリンズ市内の住宅解体現場

◎トモノミクス 被災地と企業[38]第8部(中)むきあう/復興まちづくり

 ショッキングピンクの重機が、モノトーンの被災地で活発に動き回る。
 「デモ・ディーバ(解体業の歌姫)」
 巨大ハリケーン「カトリーナ」が発生した翌年の2006年、最大被災地の米ニューオーリンズ市に、建設業とは無縁だった女性が興した解体工事会社だ。
 シモネ・ブルーニさん(45)。解体工事の仲介業で起業し、現在はピンク塗装のパワーショベル2台、廃材収集車100台を所有する。従業員12人、年間売上高は最高5億円。商業施設解体にも進出し、ルイジアナ州全域に商圏を広げる。
 以前は、視察や国際会議で同市を訪れた企業人らの案内役が仕事だった。ジャズや歴史ある街並みの紹介、郷土料理でのもてなし。そんな華やかな生活をカトリーナは一変させた。

 市内の大半が海抜ゼロメートル地帯。買ったばかりの自宅は2メートル浸水し、多くの隣人が市外に逃れた。視察はキャンセルが相次ぎ、失業した。打ちひしがれた日々の中で、被災した家屋の解体作業の音に気付いた。
 「解体は復興の第一歩だ」。重機の種類すら知らないまま走りだした。自己資金は2万5000円。前職で培ったマーケット戦略だけを頼りに看板を100個作った。「デモ・ディーバって何?」。実績はゼロだったが口コミが広がった。
 ブルーニさんは女性だからこそ業界に新風をもたらせたと自負する。
 「解体の背景にはお客一人一人の物語がある。一緒に泣き、祈る。企業も教会と同じように地域で住民と助け合い、与え合うことが社会的責任だと信じる」
 成功の鍵は、被災者と向き合う姿勢だった。

 復興まちづくりをどう描くか。米国ではNPOが企業活動の分野でも活躍し、存在感を発揮している。
 2メートル浸水した同市ラファエ地区。約900戸の低所得者向け公団住宅が被災した。再開発を託されたのは、米最大級の住宅開発NPO「エンタープライズ」だった。
 同法人が特に意識したのが「ミックス・インカム」だ。貧困層だけ集めても魅力的な地域は生まれない。入居者を優先的に呼び戻すことを前提に、中流層が住みたくなる街を描いた。
 築60年の高層住宅に代え、10年から順次、小規模アパートや一戸建てを配置。街路樹や道路を整備し、公園や公民館を造った。
 現地で副代表を務めるミッシェル・ウェッティンさん(48)は「低価格で健全な住環境を提供するのが私たちの使命。時間はかかったが、地域は見違えるように変わった」と語る。
 巨大災害が破壊した街。社会的使命を帯びた起業家や復興後を見据える民間の力が再起の礎を築く。復興CSR(企業の社会的責任)が米国で輝く。


2017年05月14日日曜日


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