山形のニュース

<教習所はしか感染>官民のリスク対策急務

 山形県置賜地域の自動車教習所の受講生から広がった麻しん(はしか)の感染で、県は関係する事業所名の公表を巡り、難しい判断を迫られた。発生直後、県は受講生が利用していた教習所とホテルの名称を伏せたが、感染の広がりを受け、ホテル名は公表せざるを得なくなった。風評被害も発生し、ホテル側には理不尽な損害が残った。国際交流の拡大で感染症リスクが高まる中、これまで以上に官民の協力関係を築く必要がある。
 最初の発症者が確認されたのは3月9日。インドネシアのバリ島から帰国後、「合宿免許」で置賜地域の教習所に通っていた20代男性がはしかと診断された。
 感染は主に男性が滞在していた長井市のホテルと教習所から徐々に広がり、約1カ月半で、男性と直接接触していない人への三次感染を含め、発症者は1都6県の60人に達した。
 県の感染症対策マニュアルは、消毒や感染者の隔離・入院など医療上の対応が中心で、事業所名の公表基準は定めていない。「その時々の状況に応じて判断するしかない」(県薬務・感染症対策室)のが実情だ。
 教習所で、最初の発症者と長時間同じ空間にいるなどした他の受講生や職員ら約500人の「濃厚接触者」が確認された。だが、県は罹患(りかん)歴や予防接種の経験、現在の健康状態などを確認でき、感染リスクはコントロール可能と判断。公表を見送った。
 一方、ホテルについては3月24日、宿泊者以外に不特定多数の客が利用するレストラン部門の従業員にも感染が確認され、名称公表に踏み切った。
 この後ホテルには宿泊や宴会のキャンセルが相次ぎ、4月末時点で少なくとも800万円の損失が生じた。幹部社員は「何の過失もないだけに、やり場のない思いだ」と嘆く。
 県の担当者もホテル側と協議を重ね、名称の公開について事前に理解を得ていたとはいえ、「営業に直接影響するので、公表の判断をするにはかなりの重圧があった」と明かす。
 県によると、今回の三次感染者27人の内訳は教習所からのルートが2人だった一方、ホテルからのルートが25人に上った。人の出入りが激しい宿泊飲食施設でのリスク管理の難しさを改めて突き付けられた格好だ。
 東京五輪・パラリンピックを控え、国内外の人の流れは激しさを増していく。感染症のリスクも高まるだけに、封じ込めに向けた官民の協力と役割分担は不可欠だ。
 現状は感染症による風評被害や営業損失に対する救済措置がなく、民間事業者が感染の拡大防止に協力しにくい要因になっている。
 事業者も感染症による損失は自然災害と同じく、常に備えを要するという認識を共有すべきではないか。ホテル・旅館や飲食店など各業界団体が国や自治体の支援を得ながら互助的な補償制度を設けるなど、官民の知恵を集めて取り組みを急いでほしい。(山形総局・宮崎伸一)

[麻しん(はしか)]麻しんウイルスによる感染症で、発熱やせき、鼻水など風邪と似た初期症状の後、高熱と発疹の症状が現れる。潜伏期間は10〜14日間。発症の前日から空気感染で他者にうつす危険性が生じる。罹患歴や複数回のワクチン接種があれば感染の可能性は低いが、免疫がない人に対する感染力は非常に強い。


関連ページ: 山形 社会

2017年05月15日月曜日


先頭に戻る