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<難病患者と家族>理解向上 努力続く

ボランティア講座で講演する小関さん。社会の無理解、無関心の解消に向け、地道な取り組みを続ける

 宮城県立こども病院(仙台市青葉区)に入院中の難病の三男(1)の口や鼻を手でふさいで殺そうとしたとして、母親(42)が昨年11月、殺人未遂容疑で逮捕された。母親は約10年前、同じ遺伝性の難病で次男を亡くしていた。介護の負担、孤立、絶望…。仙台地裁で18日に開かれる母親の裁判員裁判初公判を前に、難病患者を取り巻く現状を追った。(報道部・千葉淳一)

◎届かなかったSOS(下)支援の輪

<曇る表情>
 顔ぶれは前回とほぼ同じだった。「一般の参加者は数える程度」。仙台市のNPO法人「宮城県患者・家族団体連絡協議会」の理事長、小関理(おさむ)さん(64)の表情が曇った。
 協議会が青葉区の市福祉プラザで2月に開いた「難病患者等ボランティア講座」。毎回、一般参加を呼び掛けているが、出席した約40人の大半は関係者が占めた。
 同じ講座でも、老人介護や終活といった「誰もが通る」テーマは関心が高い。一方、難病や障害といったテーマは「当事者意識を持ちにくいのかもしれない」と小関さんはみる。
 昨年11月、青葉区の県立こども病院に入院中の難病の三男(1)に手を掛けようとした母親(42)は、約10年前に亡くした次男も同じ難病を患っていたとされる。
 自らも難病患者の小関さんは「母親は『どうして難病の子を産んだのか』『他人に迷惑を掛けられない』と悩み抜いたに違いない」と指摘する。
 難病は病気の希少性もあり、患者や家族の苦悩は理解されにくい。公的機関ですら、相談するのは家庭内のプライバシーをさらけ出すことになり、勇気が要るという。
 「社会に苦悩をすくい上げる機能があれば…」。こう悔しさをにじませる小関さん自身も、周囲の無理解や無関心に悩まされてきた。
 20歳ごろから原因不明の頭痛と倦怠(けんたい)感に苦しんできた。中学教諭になってからも毎年、20日間の年休を使い切った。周囲に体調不良を訴え続けた。「怠けている」と見られ、孤立していった。病名が判明したのは発症から10年後だ。
 医療の進歩などもあり、国の指定難病は増え続けている。小関さんは母親や自分と同じ思いをする患者や家族が一人でも減るよう、社会的関心を高める活動の必要性を訴える。

<門戸開く>
 協議会は2月28日の「世界希少・難治性疾患の日」に合わせ、名取市出身の映画監督、宍戸大裕(だいすけ)さん(35)のドキュメンタリーを上映した。6年目のイベントで初めて市民に門戸を開いた。
 タイトルは「風は生きよという」。人工呼吸器を着けた重度障害者たちが、地域で自立して生きる姿を描いた。
 舞台あいさつで宍戸さんは「自分らしく生きたくても生きられない人たちが、何を必要としているのかに思いを巡らせてほしい」と呼び掛けた。
 社会の無理解、無関心を癒やす特効薬はない−。「でも伝え続けることでしか、心のバリアフリーは実現しない」。小関さんは次の企画の準備を進める。

<宮城県患者・家族団体連絡協議会>1988年、県難病団体連絡協議会として発足。2005年、NPO法人化に伴い改称。約20の患者・家族団体が加盟。会員は約3000人。県や仙台市の委託を受け、会員や市民向け講演や講習会を年30回以上開催する。連絡先は022(796)9130。


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2017年05月16日火曜日


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