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黒毛和牛の子牛不足深刻 乳牛代理出産に活路

黒毛和牛の受精卵を移植したホルスタインに餌をやる浜田さん。移植後も通常の飼育で特別な手間はかからないという=米沢市

 全国で和牛の子牛不足が深刻化する中、山形県が和牛の受精卵を乳牛に移植し、代理出産させる技術の普及に力を入れている。代理母から生まれても遺伝形質はれっきとした和牛で肉質に影響はない。県は簡易な移植技術を企業と共同開発し、3月に特許を取得、米沢牛などブランド牛の肥育が盛んな県内で、繁殖から一貫した生産体制づくりを目指す。
 約100頭のホルスタインを飼育する米沢市の浜田篤さん(36)の牧場では昨年、5頭が受精卵移植を受け、黒毛和牛を出産。今年も3月末から4月にかけて4頭が移植を受けた。
 「代理母の間も通常の飼育方法で、特別な手間はかからない」と浜田さん。「ある程度受胎率が高ければ、乳牛の人工授精のサイクルも見通しが立ち、経営上のリスクは減る。乳価が上がらない中で貴重な収入になる。挑戦する酪農家は増えるはずだ」と話す。
 乳牛への受精卵移植は2000年ごろから各地で取り組みが本格化した。受精卵の凍結技術などは大幅に改良されたが、効率的に解凍・移植する器具がなく、普及の妨げになっていた。
 今回、県が特許を取得したのはストロー型の受精卵保存容器で、畜産器具メーカー「富士平工業」(東京)と共同開発した。受精卵を容器内で急速凍結させて保存し、解凍後、容器をそのまま移植器に取り付け、乳牛の子宮に移植する。
 解凍、移植の際に別の器具に移す必要がなくなり、農家の庭先でも簡単に行えるのが最大の利点。受胎率も通常の人工授精と同等の55%を確保できるという。
 和牛の子牛不足は全国的な課題だ。生産者の高齢化や離農に加え、10年に発生した口蹄疫(こうていえき)や翌年の東京電力福島第1原発事故により、主要産地の宮崎、福島両県で繁殖用牛が処分された影響も大きいという。
 山形県によると、黒毛和牛の子牛価格は12年度、44万円程度だったが、16年度は約80万円に高騰し、入手困難な状況が続く。県は肥育用素牛の約8割を他県に依存しており、早急に対策が求められていた。
 県内で昨年に生まれた黒毛和牛の子牛のうち、乳牛への受精卵移植で生まれたのは469頭で全体の6%だった。県は数年で10%前後に引き上げたい考えだ。
 県畜産振興課の上野宏樹畜産ブランド推進主幹は「受精卵移植で子牛不足の解消と山形牛のブランド力向上の一石二鳥を目指す」と話した。


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2017年05月22日月曜日


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