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<熊本地震>物流企業の力生かそう

全国からの支援物資が山積みとなった熊本市の集積所。整理されておらず、どこに何があるのか把握が難しい=2017年年4月、熊本市の熊本県民総合運動公園

 熊本県を中心に2度の震度7に襲われた昨年4月の熊本地震で、政府は東日本大震災の教訓を踏まえて導入した政府調達物資のプッシュ型支援を本格実施した。物流企業が協力し、避難所の物資不足対策に一定の効果はあったが、「ラストワンマイル」と言われる避難所までの配送が遅れ、市町村の集積所で滞留した。支援物資を迅速に届けるため、さらに民間の物流ノウハウを生かすべきだ。

◎プッシュ型支援の検証

 政府は本震が発生した昨年4月16日夜、プッシュ型支援の実施を表明。熊本県の物資集積拠点のグランメッセ熊本(益城(ましき)町)が被災したため、日本通運、ヤマト運輸が県外に持つ物流施設に物資をいったん集積し、市町村に送り出した。
 熊本市の集積拠点は九州自動車道の熊本インターチェンジに近い県民総合運動公園。ピークの同19日にはトラック95台が押し寄せた。
 「荷受け役に職員約10人を派遣したが、荷さばき経験がない職員の手に負える仕事ではなかった」と同市の甲斐嗣敏福祉部長(55)は振り返る。
 人手不足に加え、フォークリフトなどが足りず、荷降ろしは難航した。30台以上のトラックが数時間、動けなくなったという。
 集積所からの物資搬出にも時間を要した。甲斐部長は「在庫管理が不慣れで、地元運送業者が協力してくれたものの、職員や車が不足した」と指摘する。
 滞留の一因に、全国の自治体や企業、個人が送った民間物資が市町村の集積所で交錯したことがある。
 特に個人分は混乱に拍車を掛けた。日通業務部の丸尾克己専任部長(49)は「形が不均一で少量、多品種。仕分けや保管が難しい上、積み重ねられない。業務の負担となった」と語る。
 昨年7月に内閣府がまとめた検証リポートは、支援物資の輸送を巡り「各避難所まで届ける機能を被災直後の市町村に期待するのは困難だった」と分析した。
 状況改善は喫緊の課題だ。熊本市の場合、本震から10日目以降、物資の在庫管理をイベント業者に依頼。大型連休後は佐川急便が担い、物流は大幅に改善した。こうした実績を踏まえ、県と市町村の集積所管理や避難所への配送を民間に委ねることはできないか。
 大半の自治体は公共施設を物資の集積所としているが、構造や規模の面で多くは荷さばきや保管に適さない。民間の物流施設を災害後直ちに借り上げるか、公共施設を使う場合でも整理や配送を一元的に物流業者に任せる利点は大きい。
 施設候補は1カ所で足りない。熊本地震では益城町の日通の拠点が機能不全に陥った。大規模災害に備えるには、隣県を含む広範囲のエリアに複数の施設を確保する必要がある。
 物流施設は通常業務があり、すぐにはスペースを空けられない。事前に協定などを結び、訓練を重ねることが重要になる。南海トラフや首都直下の地震に備え、対応を急ぐべきだろう。
 災害直後、被災者にとって物流は生命線だ。物流企業はCSR(企業の社会的責任)として、この問題に積極的に関わってほしい。(報道部・高橋公彦)

[プッシュ型支援]大規模災害時、国が被災自治体の要請を待たずに必要不可欠と見込まれる物資を調達し、緊急輸送する仕組み。自治体のニーズに基づく「プル型支援」の対義語。東日本大震災を教訓に2012年に施行された改正災害対策基本法に盛り込まれ、国が運送業者に物資輸送を要請できることを規定した。改正後初めて熊本地震で実施され、食料だけで263万食を供給した。


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2017年05月22日月曜日


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