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<311次世代塾>被災沿岸部を視察

遺体が一時仮埋葬された現場で、ハンドマイクで説明する西村さんの話を聞く受講生=石巻市羽黒町の北鰐(わに)山墓地

◎第2回詳報

 東日本大震災の伝承と防災啓発の担い手育成を目的に河北新報社などが企画した「311『伝える/備える』次世代塾」の第2回講座が20日にあった。受講生の大学生ら約100人が、震災当時に遺体が仮埋葬(土葬)された石巻市の墓地や被災した仙台市沿岸部を視察。葬祭業「清月記」(仙台市)の西村恒吉業務部長(44)と宮城野区蒲生の専能寺の足利一之(もとゆき)住職(50)の証言を現場で聞き、震災直後の悲しみや混乱に思いを寄せた。仙台市が震災遺構として公開を始めた若林区の旧荒浜小も見学した。

◎清月記業務部長 西村恒吉さん(44)尊厳ある弔いとは自問

 一瞬にして多くの命が失われた被災地では火葬が追い付かず、宮城県では腐敗が進む遺体を放置できないと仮埋葬に踏み切った。6市町で2108体に及び、弊社は石巻市を担当した。
 仮埋葬は当初2年の予定だったが、火葬できる環境が想定より早く整い、掘り起こしも担うことになった。棺(ひつぎ)は土の重さと地下水で崩れ、遺体の状況は悪化。われわれでさえ震える光景と臭気だった。
 そんな中、ある幼児の父親に「最期に娘の顔を見られますか」と聞かれた。見せたら卒倒するかもしれないし、心の整理につながるかもしれない。結果的には見せられないと判断したが、本当に良かったのか今も自問している。
 大災害では多数の遺体が発生するが、それは「処理」の対象ではない。尊厳をどう保ち、遺族の納得する弔いにどうつなげるか。職業意識を強く持ち、やり切ることが求められた。

◎専能寺住職 足利一之さん(50)檀家75人犠牲祈る日々

 震災直後、寺の様子を見たら一面がれきの山で「終わった」と思った。先が見えず、またここで生活できるなんて思えなかった。
 その後、檀家(だんか)が亡くなったとの連絡が次々に入り、遺体安置所や火葬場に向かい、棺(ひつぎ)に手を合わせる日々が続いた。犠牲になった檀家は75人で、そのほとんどが家族も同然の顔見知り。突然命が奪われる災害犠牲の悲しみに直面した。
 犠牲者を送るため寺を不在にしている間、支援者や友人が全国から駆け付け、被災した寺の片付けを進めてくれた。地域の人が集まる場が復活し、人と人とのつながりを実感した。
 震災の前年2月にチリ大地震津波があったが「津波が来るのはリアス海岸。この辺りの平野部には来ない」との思い込みがあった。
 震災七回忌が過ぎた今も行方不明のままの人もおり、あの日から一歩も進めていない現実もある。震災はまだ終わっていない。

◎受講生の声

<現場で被害実感>
 津波被災地を訪れたのは初めて。震災はテレビの中の出来事でした。仙台市若林区の旧荒浜小で震災前の地区を復元した模型と校舎の周りの更地を見比べ、被害の大きさを実感。現場に赴く大切さを知りました。(仙台市青葉区・東北福祉大2年 浅利優太さん 20歳 )

<陰の献身知った>
 気仙沼市で暮らしていた祖母を震災で失いました。安置所で見た顔はきれいでした。その陰に葬祭業の方々の献身があったことを視察で知りました。家族にも被災経験のない世代にも、震災を伝え続けます。(石巻市・石巻専修大4年 志賀春香さん 22歳)

<事実と向き合う>
 今春、愛知県豊田市から応援職員として来ました。震災で起きたことにまずは向き合おうと思い、入塾しました。犠牲の現場の講話は胸が締め付けられるようでした。震災を自分の言葉で伝えられるように学びます。(東松島市・市職員 江口友介さん 28歳)

<メモ> 311「伝える/備える」次世代塾は大学生ら対象の年間15回の無料講座。次回は6月17日、「捜索と救命」をテーマに開く。連絡先は河北新報社防災・教育室=メールjisedai@po.kahoku.co.jp
 運営する「311次世代塾推進協議会」の構成団体は次の通り。河北新報社、東北福祉大、仙台市、東北大、宮城教育大、東北学院大、東北工業大、宮城学院女子大、尚絅学院大、学都仙台コンソーシアム、日本損害保険協会、みちのく創生支援機構


2017年05月26日金曜日


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