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<CSRの陰>利益優先 見切り早く

被災した石巻市沿岸部と、わずか1年で終わった共同通販のカタログ、コールセンター運営会社と立地自治体の協定締結式のコラージュ

 東日本大震災と原発事故は、復興CSR(企業の社会的責任)の対極にある、企業の利己、欲望、保身といった負の姿をもあぶり出した。大災害で顕在化した共感なき振る舞い。それもまた、被災地の現実だった。(「被災地と企業」取材班)

◎トモノミクス 被災地と企業[41]第9部(2)すてる/破談

 東日本大震災からの復興の陰で、冷たいビジネスの論理が被災地を苦しめる。
 震災から約1年後、宮城県石巻市役所の市長室。コールセンター運営会社の社長が亀山紘市長と向き合った。
 「震災で大きな被害を受けた石巻市で、雇用創出の役に立ちたい」
 水産業が壊滅的な打撃を受けた同市で、働く場の確保は喫緊の最重要課題だった。亀山市長は「進出に感謝する」と歓迎した。
 同社の動きは速かった。2012年9月に石巻で業務を始め、10月には本社を東京から移転。翌春、地元の水産加工会社7社と連携し、共同通販を始めた。
 自社のノウハウを駆使し、クレジットカード会員に各社の商品のカタログを送り、電話注文を受ける内容。被災後、休業を余儀なくされた水産加工業者は多くの取引先を失っていた。
 「出来上がったカタログは立派で事業への意欲は高かった」。参加した山徳平塚水産の平塚隆一郎社長(57)は、販路回復に期待を寄せた当時を振り返る。

 事業には市の助成金が支給された。被災者就労支援事業を活用し、民間投資促進特区の事業者に認定され、税制優遇も受けた。
 見切りも早かった。
 売り上げは伸びず、半年後、運営会社は手を引いた。共同通販は1年足らずで終わり、石巻市の本社は13年9月で引き払った。
 事業に協力した一般社団法人新興事業創出機構(仙台市)理事長の鷹野秀征(ひでゆき)さん(51)は「こんなに早く撤退するとは思わなかった。想定よりも利益が上がらなくて見限ったのではないか」といぶかる。
 復興支援を掲げた企業が短期間で撤退する事例は引きも切らなかった。コールセンター運営のディオジャパンが東北各地に拠点を開設し、雇い止めや給料の未払いを連発した末に破産したのは、その典型だった。

 企業のエゴにも映る経営判断が、被災地を振り回したこともあった。
 「出店の相談をしたい」
 岩手県釜石市商業観光課長の平松福寿(ふくひさ)さん(54)の下に13年春、1本の電話があった。東北に本社がある老舗物販店からだった。
 商業施設の進出に期待は膨らんだ。平松さんは店舗開拓担当部長らと協議を重ね、テナントの場所や広さ、家賃を詰めた。
 翌年春、契約日を決めに訪れた本社。「話はなかったことにして。釜石は商圏として魅力的じゃない」
 役員の言葉に色を失った。破談になった企業進出は幾つかあったが、ここまで一方的に打ち切られたことはなかった。平松さんは「同じ東北の企業なのに悔しかった」と唇をかむ。
 震災を商機と捉え、もうからなければ手を引く。被災者は復興支援という崇高な旗印に疑念を抱いた。CSR(企業の社会的責任)を自覚しない振る舞いは、被災地に深い傷を残した。


2017年05月30日火曜日


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