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<CSRの陰>ひずみ 下に押し付け

東京電力福島第1原発と、原発事故に伴う除染作業現場、事故後の収束作業に携わり、当時の状況を語る元作業員のコラージュ

 東日本大震災と原発事故は、復興CSR(企業の社会的責任)の対極にある、企業の利己、欲望、保身といった負の姿をもあぶり出した。大災害で顕在化した共感なき振る舞い。それもまた、被災地の現実だった。(「被災地と企業」取材班)

◎トモノミクス 被災地と企業[42]第9部(3)いつわる/原発マネー

 「労働者を使い捨てにした。許せない」
 25日夜、北九州市。東京電力福島第1原発事故の収束作業に携わった元作業員の男性(42)=北九州市=は、市民団体が開いた集会で声を振り絞った。
 2011年10月から約2年、2次下請けの作業員として溶接などに従事し、被ばく。急性骨髄性白血病と診断され、15年に初の労災認定を受けた。
 会場で、男性は現場の実態を赤裸々に語った。
 第1原発4号機建屋内での足場設置工事でのこと。放射線を遮蔽(しゃへい)する鉛ベストが不足した。「着ないでこっそり入れ」。現場監督は事もなげに告げたという。
 ベストは重さ15〜20キロ。作業効率を優先し、着用しなかった。「知識が足りなかった」と男性は悔やむ。
 第2原発内にある建屋の搬入口の改良工事中、1次下請けの現場監督が持つ警報付き個人線量計がけたたましく鳴ったことがあった。監督は「大丈夫、大丈夫」と言って解除した。
 働く前、「管理者の指示には必ず従って下さい」と言われた。だが、現場監督らに作業員の健康を守る様子は感じられなかった。
 男性は今、通院しながら妻と息子3人と暮らす。事業者は安全配慮義務を軽視していたのではないか。男性は訴える。「廃炉作業は続く。東電や下請けは作業員の健康被害をなくす必要がある。企業は被害の補償態勢を確立すべきだ」
 福島県内で続く除染作業を巡っては、受託企業が作業員の給料をピンハネする悪質な事例が横行した。
 「日当1万円 朝夕食会社負担 寮費なし」
 12年7月から9月にかけ、同県楢葉町で側溝の土砂除去や高圧洗浄をした男性(36)が当初、都内の職業安定所で見た条件だ。2次下請けの会社だった。
 同年8月、危険手当が1日1万円もらえると知った。日当と合わせ2万円を受け取れるはずだったが、実際は1万2000円だった。
 勤め先の社長はこう説明した。1次下請けからは危険手当を含め2万2000円しか支払われない。これでは会社の利益が出ない。日当は、減額した上で寮費や食費を差し引き、2000円にする−。
 「うちが赤字にならないように引き下げただけだ。文句があるなら1次下請けに言ってくれ」。男性の抗議に社長は開き直った。
 「下げるなら労働者の合意を得るのが筋だ」。男性は同僚と、この会社と1次下請けを相手に交渉を重ね、不払いの数十万円を取り戻した。理不尽な思いは、今も消えない。
 国は除染を含む原発事故の処理費用を22兆円と試算する。原発マネーを巡り、多層化された請負構造のしわ寄せが末端の作業員を苦しめる。CSR(企業の社会的責任)の基本である、コンプライアンス(法令順守)が陰る。


2017年05月31日水曜日


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