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<仙台いやすこ歩き>(59)トマト/手間をかけうま味凝縮

 藍とエメラルドグリーンの海。車窓を流れる松島湾の輝きは、もう夏だ。JR仙石線に乗って、今回いやすこが降り立ったのは松島海岸駅の次、高城町駅である。「電話ではトマト屋さんと言えば分かるって言ってたよ」と、教えてもらっていた通り、タクシーの運転手さんに告げると、車はすんなり走りだす。
 そのトマト屋さんは、「サンフレッシュ松島」といい、代表取締役の内海正孝さん(60)が迎えてくれた。早速、トマトづくりの現場へ。
 トマトハウスの大きいこと! 「こんなの初めて〜」と、巨大なハウスの中をきょろきょろ見回す2人に、「広さは1ヘクタールで、2200本のトマトを育てているんですよ」と内海さん。約百メートル四方のハウスで行われているのは、水耕栽培の一種である養液栽培という方法だそう。水や肥料をコンピューターでコントロールしながら与える…。ここは、植物工場なんだ!と改めて驚いてしまう。
 内海さんがこの方法でトマトの大規模栽培を始めたのは1999年。元々米作り農家の長男だった内海さんはサラリーマンをしていたが、農家を継ぐことに。減反が進む中、半農半漁でカキ養殖をして通販を試みるなど、安定収入の道を模索した。
 そんな折にいわき市で、東北初のトマトの養液栽培に成功している例を知り、松島地区でもできるかを探った。やれるだろう、やりたいと、県の新分野事業を支援する「グループ化補助金」に申請し、4年がかりで認可を得た。
 今年で17年目。今では17人が働いている。人工培地から支柱をはって5メートルほど上まで、トマトの幹が伸びていて、それがずらりと並ぶさまはトマトの林(大げさかな)のよう。女性たちはその中を移動式の椅子に座って場所を変えながら作業する。働いているのは人間ばかりではない。ぶ〜んぶ〜んとかすかな音をたてながら、ハチも働いているのだ。「有機栽培により近い育て方をしています。子どもと一緒。一年中まめに手をかけています」
 ここでは、年間9カ月間も収穫・出荷できるそうだ。旬は4〜5月で、最盛期には1日5トン以上も出荷するというからすごい。
 ハウス見学の後、事務所で今朝採れた真っ赤なトマトを内海さんが切って出してくださった。口に運べばまず、トマトの甘酸っぱい匂い。「みずみずしい」「味が濃いね」とパクパク。「塩を付けてみて」との言葉通りにしてみると、これがまた! 画伯もすかさず「ひとしおおいしいです」
 品種は桃太郎、中でも古くからある品種の桃太郎8(エイト)。抵抗性が低いため、トマト農家は他の育てやすい品種へと切り替えていったそう。保温も大切で、石油高騰の時はどこまでやれるかと思ったこともあったが、変えなくて良かったと話す。今では、このトマトを作りたいと名古屋の会社が隣で同様のトマト工場を開設している。なんと農業による企業誘致だ!
 つやつやのトマトを抱えた2人は、夏の匂いをかぎながら駅へと向かった。うちに帰ったら、まずはがぶりといただきたい。

◎桃太郎系市場7割占める

 トマトの原産地はペルーのアンデス高地である。16世紀末、スペイン人によりヨーロッパに渡ったが、当時は観賞植物として育てられ、野菜として欧米に普及したのは19世紀以降。日本においても17世紀初頭にオランダ人によってもたらされたものの、野菜としての普及は19世紀末ごろのことだ。
 20世紀に入り、アメリカから導入された品種によりトマト生産は各地へ普及し、戦後に需要が増大した。現在、市場の7割を占めているのが桃太郎系。桃太郎は樹上で完熟させてから出荷するトマトとして品種開発され、桃太郎8、桃太郎ファイト、桃太郎セレクトなど数々の品種が生まれた。
 栄養や効能面では、免疫機能を高めるカロテン、抗酸化力を発揮し老化を抑制する働きがあるとされるリコピン、ビタミンCなどを豊富に含む。ヨーロッパには「トマトが赤くなると、医者が青くなる」ということわざがあるほど、優れた栄養価を持つ。
 ちなみに、流通している生食用トマトはハウス栽培のため、旬は春となった。露地栽培のトマトの旬は夏である。
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 土地には、その土地ならではの食があります。自他共に認める「いやすこ(仙台弁で食いしん坊のこと)」コンビ、仙台市在住のコピーライター(愛称「みい」)とイラストレーター(愛称「画伯」)が、仙台の食を求めて東へ、西へ。歩いて出合ったおいしい話をお届けします。


2017年06月05日月曜日


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