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<宮城県沖地震39年>都市活断層 リスク大

災害時に役立つ身の回り品を並べて説明する保田講師=東北大

 1978年6月12日午後5時14分、マグニチュード(M)7.4を記録した宮城県沖地震から39年となった。当時人口64万の仙台市を中心に28人が死亡、宅地崩壊やブロック塀倒壊などを招いた戦後初の都市型災害だった。昨年4月の熊本地震で明らかになった活断層のずれによる直下型のリスクは、「長町−利府断層」=?=が通る108万都市仙台にもある。2011年に経験した東日本大震災とは異なる直下型地震、都市型災害にどう備えるか。活断層の現状、都市特有の帰宅困難者対策と合わせて考える。(報道部震災取材班)

◎突然の揺れ 予測困難/縦ずれ型 広範囲に被害/東北大 遠田晋次教授

 長町−利府断層(地図)は3000〜4000年に1回程度の頻度で、断層の北西側が2メートル隆起する逆断層。熊本地震は断層の断面が垂直に近い横ずれ型だったが、長町−利府断層は北西方向に傾斜している縦ずれ型だ(図)。
 活断層による地震は、断層の傾きとずれのタイプによって地表の揺れ方や広がりに差が出る。長町−利府断層の場合、断層の真上に被害が集中した熊本地震と違い、仙台市東部を中心に広範囲に大きな被害を及ぼすと考えられている。
 歴史的に仙台の地形は、長町−利府断層の活動の影響を受けながら形成された。青葉山(青葉区)も、大昔は広瀬川が流れるほど標高が低かったが、20万年かけて100メートル隆起した。年平均0.5ミリだが、日常的に動いているのではなく、大地震のたびに断続的に隆起したとみられる。
 活断層型地震の震源は地表から10〜15キロと、ごく浅い。そのため、発生から地上で揺れを感じるまで時間差はほとんどなく、逃げる時間もない。緊急地震速報も間に合わないだろう。熊本地震でも速報は揺れが始まった数秒後だった。
 都市機能が集中する市街地の真下を活断層が通るケースは、阪神大震災と同じだ。政府の地震調査研究推進本部が出す震度分布の推定によると、長町−利府断層が動いた場合、仙台の市街地のほとんどで震度6弱〜7の揺れが観測される。間違いなく仙台の都市機能はまひするだろう。地盤の軟弱さによっては想定以上に揺れることもある。
 地震波の種類によっても被害が異なる。直下型では短い周期の波が出やすく、低層や中層の建物が被害を受けやすい。建物を耐震化する上で、自分の住む地域の地盤の強度を知っておくことは重要だ。
 内陸の活断層が動く地震がいつ起きるか、予測は難しい。今後30年以内の確率は1%以下と言われるが、長町−利府断層は過去の動きがよく分かっていない。「いつ起きてもおかしくない」と考えるべきだ。
 活断層による地震は、震災時のように小さい揺れの後に大きな揺れが来るのではなく、突然「ドン」と大きな揺れが襲う。次の行動を考える余裕はない。自分の命を守ることを最優先に日頃から備えてほしい。

<とおだ・しんじ>東北大大学院理学研究科博士前期課程修了。電力中央研究所、東大地震研究所、産業技術総合研究所活断層研究センター、京大防災研究所を経て12年10月から東北大災害科学国際研究所教授。専門は地震地質学。宮崎県延岡市出身。50歳。

◎自助強化身の回り品活用

 活断層による地震発生の予知や建物被害を防ぐ手だてに限界があるならば、どう備えればいいのか。防災士でもある東北大災害科学国際研究所の保田真理講師(防災教育)は「頭を守り、適切に避難をする自助の強化に尽きる」と言う。大事なのは防災の基本の徹底。今すぐ役立つ身の回りの品を紹介してもらった。

 ◇ゴム手袋
 医療、介護用。断水時、がれきや土ぼこりから手を清潔に保つことができる。救助活動に参加したり、自分がけがをしたりした時、感染症予防にもなる。
 ◇ペットボトル
 飲料水の確保のほか、手洗いや洗顔時にも使える。1リットル型は大きいので手軽に扱える500ミリリットル型が最適。トイレで水を流すのにも使える。
 ◇筆記用具
 壁やドアに貼り付けられる付箋がよい。避難所の安否確認掲示板や自宅のドアなどに貼るのに便利だ。物資の配給予定などを整理するのにも活用できる。
 ◇携帯ラジオ
 震災時には地元のコミュニティーFMなどから、各地域の支援情報を得られた。携帯電話は電池の消費を抑えるため、通信手段にだけ使った方が良い。
 ◇お菓子
 シリアルバー、あめ玉などを常備し、食べたら補充する。避難所での配給はパン、おにぎりなど炭水化物に偏る。ビタミンなどが取れる粉末緑茶もあればなお良い。避難中は気分が落ち込む。好物を最優先で。
 その他、携帯できる便利な品は表の通り。
 保田講師は「バッグに入る小さなビニール袋にまとめて持ち歩いてほしい。普段から使い、電池や食料などがなくなったら補充する」とアドバイス。防災袋で用意しても押し入れなどに放置して忘れ、消費期限が切れてしまうことも。「実際に準備して使い、常に備えることが大切」と語った。

◎耐震化に限界備蓄が重要/東北大 柴山明寛准教授

 長町−利府断層による地震が起きれば、震度6強以上の揺れが予想されるエリアが仙台市東部を中心に広がる。市中心部は大打撃を受けるだろう。住宅だけでなく学校や行政庁舎、病院などの公共施設にも被害が出る可能性がある。
 震災後、地震に強い建物は増えたが、仙台の都市機能は震災以上にまひする可能性がある。地下鉄やJRの高架は一部で過去の断層と交差する。過去の断層と同じ位置が動けば、交通網やライフラインへの影響は避けられない。行政職員も被災し、行政機能が失われることも覚悟したい。
 断層による地震への備えは、既に市街地が形成された今、街の区画を変えるなどの大規模な対策は難しい。建物の耐震化で被害を最小化するしかない。
 現行の建築基準法に従って耐震化を施せば、家屋は震度6強〜7程度に相当する地震に1回は耐え、倒壊を免れて命だけは助かる。ただ、大きな余震が重なれば倒壊の可能性も出る。熊本地震のような2次被害を防ぐため、安全が確認できるまで被災家屋に戻ってはいけない。外観は問題なくても震災で損傷している危険性もある。
 残念ながら、耐震補強のランクを上げても限界がある。断層直上の建物は被害を防ぎようがない。
 とはいえ、自分の家をしっかり守ろうとしないのは問題だ。例えば、崩れかかった建物が、隣の健全な建物を壊す場合もある。自宅を頑丈にすることは地域全体の防災力向上にもなる。
 ハード対策の限界を知った上で、臨機応変にバックアップするソフト対策が重要になる。都市機能が失われた場合、3日間から1週間の備蓄が必要になる。完全な対策はないとしても、自ら備えて支援を待つ。各自の取り組みが、多くの人の生存の可能性を広げる。
 備蓄品は、家屋の倒壊や家具の転倒などで取り出せなくなる恐れもある。分散保管が原則だ。物置、玄関先、2階、車の中などに分けたほうがいい。職場と自宅で分ける方法もある。
 備蓄品を普段から使い、補充する循環備蓄が望ましい。何が減り、何が残っているか、日常的に把握できる。循環備蓄が難しい1人暮らしの人向けの非常食もある。できるだけ多くの人に備えを進めてもらいたい。

<しばやま・あきひろ>工学院大大学院工学研究科建築学専攻修了。東北大研究員、情報通信研究機構専攻研究員、東北大助教を経て12年6月から東北大災害科学国際研究所准教授。専門は地震防災工学、災害情報学、地域防災。静岡市出身。40歳。

[長町−利府断層]宮城県村田町から仙台市中心部を通り、利府町に至る。長さは20〜40キロ。長町−利府線のほか円田、坪沼、大年寺山など複数の断層で構成され、「長町−利府線断層帯」とも呼ばれる。仙台市が02年に発表した被害想定では、地震規模はM7.5、死者1032人、負傷者1万3254人、長期避難者17万9319人、建物の全半壊が約5万棟。


2017年06月13日火曜日


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