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<宮城県沖地震39年>帰宅困難者解消が鍵

震災発生後、大勢の帰宅困難者が押し寄せた東二番丁小=2011年3月11日、仙台市青葉区
JR仙台駅はコンコースや16年3月完成の東西自由通路などに計5000人以上を受け入れる。「訓練やマニュアルだけでなく、現場の的確な判断が重要になる」と話す佐藤副駅長
宮城第一信金本店は4階にある会議室に100人を収容する。昨年の訓練では実際に帰宅困難者役の40人を受け入れた=仙台市青葉区

 東日本大震災では交通機関が全面的にストップし、仙台市青葉区のJR仙台駅周辺に約1万1000人の帰宅困難者が発生した。行き場のない群衆が近くの学校や企業にも押し寄せ混乱した教訓を踏まえ、仙台市とJR東日本、周辺商店街など24団体は「仙台駅周辺帰宅困難者対策連絡協議会」を設立し、対策を進めている。
 対策の大きな柱は、帰宅困難者が身を寄せる「一時滞在場所」の確保。仙台駅周辺では12カ所(地図)、計9610人分を確保した。震度6弱以上の地震や市全域に及ぶ大規模災害が発生した場合、市災害対策本部の要請か施設管理者の判断で開設する。
 駅構内に設けた現地対策本部が陣頭指揮を執る。まず駅西口、東口の「緊急待避場所」に帰宅困難者を集め、そこから各一時滞在場所に誘導。毛布や飲料水、非常食を提供する。
 協議会は残り約1400人分の一時滞在場所の確保を急ぐ。他にJR長町駅(太白区)周辺は2カ所に計2000人分を既に確保。地下鉄泉中央駅(泉区)周辺も1000人分を確保できる見通しだ。
 徒歩で帰宅する人への支援も重要だ。市と宮城県はコンビニ、ファストフード、宅配ピザなどチェーン11社と協定を結び、市内約650店舗を「災害時帰宅支援ステーション」として水道水、トイレ、交通情報などを提供する。
 市などは2013年から毎年9月、仙台駅周辺で帰宅困難者を想定した避難訓練を実施。昨年は約300人が参加し、ホワイトボードやツイッターでの情報提供、4カ国語による案内などを確認した。
 こうした公助、共助の対策以上に重要なのが、「帰宅困難者を出さない」こと。市民、事業所それぞれの自助努力が求められる。
 市は企業や店舗に対し、発災後は従業員らを事業所にできる限りとどめ、一斉帰宅を抑制するよう呼び掛けている。市減災推進課は「事業所の耐震措置や3日分程度の備蓄、家族との安否確認手段の確認など、それぞれの備えを心掛けてもらいたい」と説明する。

◎誘導、情報提供現場手探り

 帰宅困難者の大量発生は、都市部の災害対応の大きな障害となる。一時滞在場所の確保は進む一方で、円滑な避難誘導や情報提供の在り方など依然課題があり、現場の模索が続く。
 震災発生時、神奈川県茅ケ崎市の行政書士粂智仁さん(48)は出張で仙台市青葉区にいた。JR仙台駅では倒壊の危険を理由に屋外へ出された。雪の中、右往左往の末、17キロ離れた岩沼市の知人宅まで数時間歩いて避難。「誘導も逃げる場所の情報もなかった」
 駅周辺の商業施設も閉鎖し、近くの学校に多くの人が流れた。東二番丁小には約1200人。「校舎に入れないのか」。怒号が飛び現場判断で開放したが収容しきれず、対応する人、物資もトイレも不足した。
 同小は地域住民が身を寄せる指定避難所だが、機能はまひした。当時の校長今野英二さん(66)は「帰宅困難者を見越し、市教委などが早期に職員を派遣して対応してほしい」と話す。
 現在の赤間宏校長(60)も学校への流入は避けられないと懸念する。「まずは学校に、との認識は根強い。来た人は断りにくい」と明かし、商店街など周辺を含めた対策を求める。
 仙台駅に最も近い商店街、名掛丁商店街振興組合の安住浩一理事長(59)は一時滞在場所の周知が不十分だと感じる。避難誘導の際も「避難所に行く地元住民と、帰宅困難者の選別は困難だ」と不安視する。
 一時滞在場所となる施設も手探りだ。仙台駅前の商業施設「アエル」は、オフィスフロアなどに200人を収容する。運営会社は「入居者と商業エリアの安全を確保しながら、不特定多数の人を受け入れる難しさはある」と説明。受け入れ訓練を検討する。
 宮城第一信金本店は市内の金融機関で唯一、100人の受け入れを決定。職員が泊まることで帰宅困難者発生の抑制とセキュリティー確保を両立させる。菅原長男専務理事は「出入り管理や帰宅困難者同士のトラブルなど、運営が混乱する恐れはある」とみる。
 震災直後の閉鎖で帰宅困難者発生の一因となったJR仙台駅。耐震工事を施し、今後は新設の東西自由通路を含め最大5000人以上を受け入れる。佐藤正幸副駅長は「最終的には日々の防災意識と現場の判断力。情報連絡の在り方など一つ一つ課題をつぶしていくしかない」と強調する。

◎防災教育進め混乱回避を/東北大災害科学国際研究所・佐藤健教授

 仙台市の帰宅困難者対策の課題は何か。今後必要な対応について東北大災害科学国際研究所の佐藤健教授(地域防災)に聞いた。

 帰宅困難者の大量発生による混乱を防ぐには、対策の周知徹底と事業者の協力が不可欠だ。市は一時滞在場所の位置や災害時の行動について、防災教育などあらゆる手段で市民に伝えるべきだ。事業者や商店主らも自ら知る姿勢が必要。従業員の一斉帰宅抑制や滞在場所確保、市民の理解など全てが連動する。
 周知徹底されるまでは、東日本大震災時のように、指定避難所の学校などに帰宅困難者が駆け込む事態はあり得る。過渡期の対応として、指定避難所を補助する近隣施設に収容するなど、暫定的な計画を作ることも一つの方法だ。
 市はJR仙台駅周辺の帰宅困難者を1万1000人と想定するが、季節や時間帯で変動する。商業施設の開業で増える要素もある。仙台七夕など滞在人口の最大値を含め、複数のレベルで対応を検討すべきだ。
 訓練はアーケード商店街の買い物客を滞在場所までどう誘導するかなど一連の動きを通して行ってはどうか。課題が明確になる。
 地域事情に応じて対策を広げるべきだ。震災を教訓に、仙台で帰宅困難者対策のロールモデルを構築してほしい。


2017年06月13日火曜日


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