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<復興を生きる>美しい福島 書に込め

滝桜に向かって書をしたためる千葉さん=4月22日、福島県三春町

◎3・11大震災/国内外巡り「今」発信 書道家 千葉清藍さん=郡山市

 東日本大震災と東京電力福島第1原発事故に見舞われた「福島の今」をどう伝えるか。「自分なりの道がある」。郡山市の女性書道家の千葉清藍(せいらん)さんは、福島県内をはじめ国内外で筆を走らせる。
 芝生の広場に畳1枚ほどの大きさの紙を広げる。向かい側には満開の桜。じっと見詰めた後、体全体を使って筆を動かした。
 千葉さんは4月22日、福島県三春町の滝桜と向き合った。一気に書き上げたのは「瞬」の1文字だ。
 「あすは出合えない桜の『一瞬』の美しさを表現した」。大災害を経て悩みながらも福島に生きる人々と接して感じた命の瞬き。「私も一瞬一瞬を大切にしたい」との思いを重ねた。

 東京都出身で幼い頃から書道に打ち込んだ。テレビ局に就職し、2000年に郡山市に移住。福島の豊かな自然に引かれた。
 移住から10年後、筆を手に県内全59市町村を回る旅を開始した。書道を始めて20年の節目でもあった。
 ボタンが咲く須賀川市や尾瀬の湿原で紙を広げた。富岡町の漁港も訪れ、潮風を全身で受け止めた。
 残り6自治体。原発事故は53市町村を回ったところで起こった。
 放射能、危険、不安、避難…。負の言葉が福島を覆う。福島の美しさがかすんでいくようだった。
 これまで、書道の旅は自己満足に近かった。でも「自分にしかできないことがあるはず」。芽生えた小さな使命感が、新たな旅のスタートとなった。
 避難区域となった沿岸部からの避難者らが暮らす仮設住宅の訪問を重ねた。郡山市やいわき市など延べ10カ所以上を回った。

 12年初め、会津若松市の仮設住宅での経験が忘れられない。避難者にどう向き合えばいいか分からず、「好きなように書いてみて」と筆とはがきを渡した。
 書いてくれたのは「前進」「笑顔」「感謝」といった言葉。前を向こうとする決意や願いがにじみ出ていた。「書には力がある」と改めて思い知った。
 13年からは毎夏、米国に通う。
 「震災から時間がたてば記憶は風化していく。一方でいまだに怖い記憶が残り、心の傷の癒えない子どもたちもいる」
 書のライブパフォーマンスや教室を開催。海外に福島の現状を伝えている。
 14年にテレビ局を退職し結婚。翌年1月に長女、今年3月に長男が誕生した。
 出産を控えた昨年末、避難生活を送る親子などを対象に「ミニ掛け軸」を作る講座を郡山市で開いた。材料には地元産和紙を使った。
 「子どもたちに地元の福島を誇りに思ってほしい」。「旅する書道家」を自称する千葉さん。美しい福島を、書を通じて次の世代に伝えたいと願う。(福島総局・高橋一樹)


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2017年06月14日水曜日


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