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<復興CSR>企業人のスキル 威力

 復興の進路を照らすCSR(企業の社会的責任)。企業や社員は私益を超え、東北の被災地で貢献の在り方を模索する。人材、投資と消費、教育。展開の場は多岐にわたる。被災地の自治体は企業の力をどう引き込むか対応力が問われる。(「被災地と企業」取材班)

◎トモノミクス 被災地と企業[45]第10部 展開/(1)わかちあう/プロボノ

 ITサービス大手のプロチームが、東日本大震災の被災地の課題を一つ、解決した。
 宮城県女川町でスペインタイルを制作・販売するNPO法人「みなとまちセラミカ工房」。昨年、顧客情報管理システムを導入し、紙ベースで煩雑を極めた業務の効率化に成功した。阿部鳴美代表(56)は「制作に充てる時間が増えた」と喜ぶ。
 システムを構築したのはSCSK(東京)。社員4人がボランティアで半年かけて作り上げた。阿部代表とテレビ会議で要望や課題を確認。業務終了後や休日を使い完成にこぎ着けた。
 車載システム事業本部の石井裕(ひろし)さん(36)は仙台市出身。津波で父と祖父母を亡くした。被災地には特別な思いがある。「いつもの仕事相手は大企業の一部門。規模は小さくても事業全体の流れを体感できたのは得難い経験になった」と働きがいをかみしめる。

 高度な知識や技術を持つ企業人や専門家による社会貢献活動は「プロボノ」と呼ばれる。
 同社は2014年、社内でプロボノの募集を始め、14件に52人が参加した。その一つがセラミカ工房への支援だった。流通システム事業部門の西園友美さん(29)は「阿部さんの喜ぶ顔を見て、自分のスキルで社会貢献できることを知り、自信になった」と語る。
 震災直後、泥かきなど数の力が求められたボランティアへの期待は、時間とともに多様化、複雑化した。応えたのがシステムエンジニアや公認会計士、ウェブデザイナーら、その道のプロたちだった。

 広告代理店の東急エージェンシー(東京)社員渡辺敬子さん(31)もその一人。命を守る学びの機会を子どもたちに提供しようと、石巻市のNPO法人「ぐるぐる応援団」などが今年3月設立した「こども防災協会」をサポートする。
 渡辺さんが受け持つのは防災キャンプの広報戦略や情報発信だ。「思いを伝えるのが広告。内容は本業と違っても、本質は変わらない」と言う。
 宮城県内の女性建築士約20人は、津波で流失した家屋の間取りを再現する「記憶の中の住まい」事業を手掛ける。これまで26軒の間取り図を被災者に届けた。
 呼び掛け人の西條由紀子さん(66)=仙台市=は「震災前の暮らしを思い出す手だてになってくれれば。息長く続けたい」と労力を惜しまない。
 震災の前後でボランティアの風景は変わった。その象徴の一つが企業人のプロボノだ。ラテン語の「公益のために」が語源という。


2017年06月17日土曜日


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