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<仙台地裁切り付け>被告の保釈 賛否交錯

法廷で被告による刺傷事件が起きた仙台地裁=仙台市青葉区

 仙台地裁で今月16日の判決宣告中、傍聴席の警察官2人が被告に切り付けられた事件で、殺人未遂容疑で逮捕された被告の男は地裁から保釈決定を受け、ナイフなど凶器5点を法廷内に持ち込んでいた。凶行は厳粛な法廷の秩序も切り裂いた。保釈を認めた裁判所の判断や法廷の安全確保の在り方を巡り、法曹関係者の間で賛否が割れる。

 宮城県迷惑防止条例違反(盗撮)の罪に問われた山形市のコンビニ店員淀川聖司容疑者(30)は、最初の逮捕から約1カ月後の2月20日に保釈された。判決当日、身体検査はなく、事実上、凶器類を自由に持ち込める状態だった。
 刑事訴訟法は重罪に問われた場合などを除き、裁判所は原則、被告の請求に基づき保釈を許可しなければならないと規定。淀川容疑者は盗撮行為を否認したため、仙台地検は保釈を許可した地裁に「証拠隠滅の恐れがある」などと準抗告したが、退けられた。
 高橋孝一次席検事は「保釈中に犯行に及んだのは非常に残念。検察は保釈すべきではないと判断したが、見解が違った」と語る。
 犯罪白書によると、保釈中に別の事件を起こして起訴される被告は増加傾向にあり、2015年は188人と10年前の05年(80人)に比べ、約2.4倍になった。
 ただ、今回のように保釈中に別の罪を犯す「再犯の恐れ」は、保釈の判断自体を左右しない。仙台高裁刑事部で裁判長を務めた泉山禎治弁護士(仙台弁護士会)は「問題がない限り、基準を適用する。否認事件は証拠隠滅や自殺の恐れを考慮するが、今回の判断は特に問題ないだろう」と話す。
 裁判所はかつて保釈を積極的に認めてこなかった経緯があるだけに、法曹関係者の間で「今後保釈が認められにくくなるのではないか」との懸念も広がる。
 立命館大法務研究科の渕野貴生教授(刑事訴訟法)は「リスクが高い被告や事件の場合、被告の言動を見極めた上で所持品検査などを適切に実施すれば同様の事件を防げるはずだ」と指摘。「保釈のハードルが上がれば、時代に逆行する」とくぎを刺す。


◎最高裁長官が「再発防止を」合同会議で訓示

 全国の高裁長官や地裁、家裁の所長が集まり、司法行政の課題を話し合う「長官・所長会同」が21日、最高裁で始まった。寺田逸郎最高裁長官は、仙台地裁の法廷で被告が刃物を振り回し、取り押さえようとした警察官2人にけがをさせた事件について「裁判公開の理念を脅かしかねない事態で、深刻に受け止める必要がある。裁判所全体として、再発防止に向けて一段と工夫を加えた取り組みを進めていく」と訓示した。
 戦後、現在の裁判所制度が発足してから、今年5月で70年を迎えた。寺田長官は「国内外の情勢変化に適時適切に対応し、国民の信頼をより強固にする努力を続ける」とも述べた。
 会同は年に1回2日間開かれる。今年は、少子高齢化などに伴い、難しい事件が増えている家裁の機能強化や、裁判員を選ぶ手続きに出席する候補者の割合が年々低くなっている裁判員裁判の運用の在り方などを協議する


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2017年06月22日木曜日


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