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<復興CSR>生活改善 経済を回す

健康100日プロジェクトの専用サイトを沢田さん(左)に説明する阿部さん(中央)と小松さん=宮城県女川町

◎トモノミクス 被災地と企業[50]第11部 明日(1)こころみる/健康

 東日本大震災で被災した人口約6000の町を丸ごと健康にしよう。製薬会社とNPO、行政が一丸となり「大作戦」が動きだす。
 宮城県女川町は高齢化率が37.8%。震災に伴う生活環境の激変で大人も子どもも運動不足が目立つ。メタボリック症候群の町民は予備軍を含め6割に上り、生活習慣の健康基準を満たす子どもは1割と低い。

 昨年始まった「健康100日プロジェクト」は「1日7000歩」「食事は1口20回以上かむ」などの目標を決め、スマートフォンなどに記録する。職場や地域のチーム戦もあり、成果が表れた団体を表彰する。
 町内の会社員沢田洋美さん(42)は「子育てサークルの仲間と参加している。普段は自分の健康に気を使わないけれど、気軽に楽しめる」と歓迎する。
 ノウハウはロート製薬(大阪市)が提供した。予防医療に力を入れる同社は今回、慢性疾患を防ぐため、生活習慣の見直しや目標設定をアドバイスしている。
 同社地域連携室の阿部真さん(30)は「『ローカルヘルスケア』という新事業につなげていきたい。健康増進のプロデューサー役を担う」と張り切る。
 製薬業界は大型合併など再編が進む。同社が目指すのは「薬に頼らない製薬会社」。売上高は現在、医薬品以外の化粧品などが7割を占める。新事業の芽として期待がかかるのが、本業と地域課題の解決を結ぶローカルヘルスケアだ。

 同社と町をつないだのは町内のNPO法人「アスヘノキボウ」の小松洋介代表(34)だった。
 小松さんは2015年、超巨大ハリケーン「カトリーナ」(05年)に襲われた米ニューオーリンズ市を視察した。地域再生のため、NPOが平均寿命が短い貧困地区に高級スーパーを誘致し、食育で住民の健康を改善したことを知る。
 「震災からの復興まちづくりに健康の視点が抜け落ちていた。健康で経済が回せるかもしれない」
 帰国後、女川町民の健康状態を分析すると、生活習慣病の予備軍が多かった。ストレス、運動不足、不規則な生活など被災地特有の事情が絡んでいた。
 小松さんは「女川は人口減少率が全国ワーストの課題先進地。取り組みが他地域に広がり、未来を担う子どもたちの健康につながってほしい」と夢を描く。
 須田善明町長(45)は「町民がアクティブに活動すれば活力が湧く。結果として医療費の抑制につながればいい」と期待を込める。
 健康は命。その重さを知る被災地で復興CSR(企業の社会的責任)が根付いてきた。企業と地域が長期的な視点に立ち、共通の価値を見いだす。新たなビジネスモデルが、経済の歯車と徐々にかみ合ってくる。

 企業が本業の成長を見据え、地域に深く関わり、人々の幸福度を上げる。資本主義の明日を開く鍵がそこにある。友として、共に、利益を伴いながら。東北の被災地からトモノミクスを発信しよう。
(「被災地と企業」取材班)=第11部は4回続き。


2017年06月24日土曜日


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