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<仙台地裁切り付け>安全と公開 どう両立?

仙台地裁の所持品検査で使われているゲート型(奥)と携帯型の金属探知機

 仙台地裁で16日に判決の宣告を受けていた被告(保釈中)が刃物を振り回し、取り押さえようとした警察官2人が切り付けられた事件は、「開かれた法廷」と「法廷の安全」のバランスをどう取るかという課題を現場に突き付けた。最高裁は全国の地裁、高裁に所持品検査を積極的に検討するよう通知。東北の裁判所でも試行錯誤が続く。

 「ポケットの中身を全て出してください」。仙台地裁は20日、保釈中や在宅起訴された被告を対象に、裁判官が持つ「法廷警察権」に基づく所持品検査を始めた。職員が被告の全身に小型の金属探知機を当て、ライトで照らしながらかばんの中を確認した。
 対象は暴力団関係者が絡む事件など月1、2件程度だったが、20日以降は全11件で実施。職員が庁舎内で目を光らせ、裁判所の雰囲気は一変した。これまでトラブルはなく、対応は「当面の措置」(総務課)という。
 事件後、東北の各地裁も対応に追われている。盛岡、秋田、福島では仙台と同様、原則として保釈中などの被告の身体検査を実施。山形もほぼ同じ運用を始めているとみられ、青森も追随する方針だ。
 福島地裁は「法廷内で発生した重大事件。安全が確実に担保されるよう取り組む」と説明。山形地裁は「被告の言動や人間関係の情報収集を強化し、適切に対応したい」と述べた。
 東北で検査強化の対象は被告に限られるが、東京など一部の地裁では事件前から入庁者全員を対象に検査を実施している。法曹関係者からは、過剰な警備が「開かれた法廷」の理念を損ねかねないと危惧する声も上がっている。
 秋田弁護士会の三浦広久会長は、身体検査について「傍聴人や証人の安全確保のために必要」と理解を示す一方、「過剰警備は裁判の公平性にも影響する」と指摘。岩手弁護士会の東海林利哉会長は「裁判員制度導入後に掲げてきた『開かれた司法』の考えに反しかねない」と警鐘を鳴らす。
 青森県弁護士会の横山慶一刑事弁護委員長は「検察、裁判所、弁護人の法曹三者が協議し、対策の合意が必要だ」と強調する。
 仙台地裁は26日に警察や検察と警備の在り方を協議する予定で、傍聴者や民事にも対象を広げるかどうかを含め慎重に検討する。
 立命館大法務研究科の渕野貴生教授(刑事訴訟法)は「過剰な対応は裁判公開の原則に抵触し、プライバシーを侵害する恐れもある。事件ごとにリスクを判断し、必要な被告に限定すべきだ」と指摘する。


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2017年06月25日日曜日


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