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<ILC>全長20キロに短縮 費用圧縮

 超大型加速器「国際リニアコライダー(ILC)」の建設を目指す国際将来加速器委員会(ICFA)が、最大の懸案となっている巨額な建設費を削減するため、ILCの全長を31キロから20キロに短縮する計画を進めている。1兆円を超す建設費が30%以上圧縮されると予想され、候補地で岩手、宮城両県にまたがる北上山地への早期建設につなげたい考えだ。

 ILCの建設を巡っては、費用の半分が立地国の負担になることがネックとなり、日本政府は態度を決めかねている。世界各国の研究所トップらでつくるICFAの国際設計チームが現在、建設実現を目指す研究者らの意見を踏まえ、予算削減に向けて従来の計画を見直しており、8月に新計画を決める。
 新計画は初期段階の建設コストを抑えるため、全長20キロのILCを造った後、段階的に30キロ、50キロに拡張する「ステージング」という手法を採用する。ILCの長さに応じた研究対象は図の通り。当初はヒッグス粒子と暗黒物質だが、将来、ヒッグス同時生成などに広がる可能性もある。
 全長短縮に加え、文部科学省と米エネルギー省は設備の性能を向上させる共同研究に着手した。これらの研究を踏まえれば、従来計画から30%以上の建設コスト削減が見込めるという。
 削減の背景には、巨大加速器の建設を検討しているライバルの中国の存在があり、日米欧の科学者が中心のICFAに現実的な選択に向かわせたとの指摘もある。
 ILC計画の国際交渉に当たる東大素粒子物理国際研究センターの山下了特任教授は「各国政府がコスト負担で納得でき、早く研究環境が整う現実的な見直し」と指摘。「20キロでも多様な課題があり、多くの研究者が集まる。地域への効果は大きい。小さく始め、大きく育てる思いで早期実現につなげたい」と話す。
 東北ILC推進協議会と先端加速器科学技術推進協議会(東京)は、夏までに北上山地周辺の受け入れ態勢などをまとめ、文科省は2018年に誘致の可否を判断するとみられる。

[国際リニアコライダー(ILC)]
 宇宙誕生から1兆分の1秒後を再現できる次世代の直線型加速器。トンネルに設置した超電導加速器で電子と陽電子を衝突させ、生まれる粒子を調べる。世界の科学者は2020年代前半に国際合意を得て、30年前後の稼働を目指す。ヒッグス粒子発見を主導した欧州合同原子核研究所(CERN)の加速器の後継と期待される。


2017年06月25日日曜日


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