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<復興CSR>個性見いだし 伸ばす

従業員にピザの焼き方をアドバイスする渡部社長(右)。従業員の仕事ぶりが人気レストランの運営を支える=仙台市若林区の「六丁目農園」

◎トモノミクス 被災地と企業[52]第11部 明日(3)障害者雇用/ととのえる

 「奇跡のレストラン」と言われる。障害者雇用と売り上げの両立をハイレベルで実現した。
 週末、仙台市若林区のビュッフェレストラン「六丁目農園」のランチタイムは家族連れであふれかえる。野菜を中心に、和洋中の料理が常に40〜50種類並ぶ。
 常連という富谷市の会社員渋谷有美さん(24)は「料理はおいしく、野菜がたくさんあってうれしい。特に好きなのはタマネギ入りカレー」と満足げだ。
 従業員は別店舗を含め120人。このうち約70人が精神障害者と知的障害者だ。ホール業務の小野絵美子さん(30)は「職場の人は優しい。お客さんが多いと大変だけど仕事は楽しい」と充実した表情で話す。
 野菜は手で切る。手作り感があり、色つやが違う。ピザは手で伸ばし、窯で焼く。手作り豆腐やじっくり煮込んだカレーも人気だ。ランチだけの営業で売り上げは月700万円。週末の予約は1週間前に埋まる。

 「奇跡」の秘密は二つある。一つはビュッフェ形式の導入。接客を根本的に変えた。臨機応変な対応を迫られる場面が少なく、障害者にとって働きやすい。
 もう一つは障害者の個性だ。雇用している障害者は一つのことを黙々とこなす人が多い。とことん手間暇をかけることや、丁寧な手仕事に向いている。
 レストランを運営するアップルファームの渡部哲也社長(49)の気付きは、8年前にさかのぼる。
 経営していたたい焼き屋で雇った障害のある青年が、作業を繰り返すうちにめきめきと腕を上げた。
 得意な所を見いだし、伸ばす。働く環境づくりの大切さを知った渡部社長は「人間は役割を持って生まれてくる。障害者に得意な仕事を見つけ、企業や社会が必要とする人材に育て、経済的自立につなげる」と使命感を抱く。
 障害者雇用を組み合わせた同社のビジネスモデルは全国に広がり、大阪市や福岡市など7カ所で話が進む。東京の大手企業の社員食堂業務も受注した。
 東日本大震災後、被災地は沿岸部を中心に膨大な雇用を失った。仕事を奪われ、復興への一歩を踏み出せない被災者を目にし、渡部社長は生きる上での雇用の意義を痛感した。

 六丁目農園の運営は被災地で育まれたビジネスモデルだった。渡部社長はかみしめるように話す。
 「従業員、経営者、客が満足し、商売が長続きする『三方よし』。日本人が大切にしてきた価値観が弱者の雇用を生み、守る。そこに利益が付いてくる。震災後、東北には新たな価値観が芽生えた」
 障害の有無を超え、働く場が個々の人間を照らす。自立、生きがい、自分の存在意義。社会的使命を自覚した経営は、客と利益を引き寄せる。


2017年06月26日月曜日


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