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ハンセン病問題 負の歴史、政治は直視を

 国立ハンセン病資料館(東京都東村山市)に、空っぽのケースが展示されている。「取り戻せていないもの」と説明書きがある。

◎東京検分録

 手にしていないのは「家族との絆」「社会との共生」「入所前の生活」「人生の選択肢」の四つ。ハンセン病患者に対する強制隔離政策がもたらした被害の大きさを伝える。
 全国ハンセン病療養所入所者協議会(全療協)など3団体でつくる統一交渉団と国の定期協議会が22日、東京都内であった。隔離政策で人生を奪われた人々が安心して暮らせる環境はまだ整っていない。取材を通して痛感した。
 協議会で特に問題視されたのが、全国13の国立療養所で深刻化する医師不足だ。この5年で充足率が82.2%から76.0%に落ち込み、青森市の松丘保養園など5カ所では医療体制の責任者となる副園長職の医師も不在となっている。
 背景の一つに国立病院機構との待遇格差があり、厚労省は人事院に給与水準の改善などを求めてきた。
 会合で全療協の藤崎陸安事務局長は、古屋範子厚生労働副大臣に対し「事務方の努力は承知しているが、政治的な判断も必要ではないか」と迫った。
 13カ所の入所者数は1468人で、平均年齢85.3歳(5月1日現在)。「最大限努力する」と応じた古屋氏に、藤崎事務局長は「医師不足は死活問題。一刻の猶予もない」と重ねて訴えた。
 政治はハンセン病問題の解決に大きな役割を果たしてきた。2001年、強制隔離を違憲と断じた国家賠償訴訟の熊本地裁判決を巡り、当時の小泉純一郎首相は控訴を断念。08年には元患者の権利を守り、療養所での十分な医療体制の確保を求めるハンセン病問題基本法が議員立法で成立した。
 強制隔離を定めた「らい予防法」廃止から21年。16年には東北在住者を含む元患者の家族568人が隔離政策で差別や偏見を受けたとして、国家賠償請求訴訟を熊本地裁に起こした。
 政府はもちろん国会議員一人一人は、これまで以上に元患者らの訴えに耳を傾けるべきだ。負の歴史を直視し、誠実に向き合う姿勢を忘れないでほしい。(東京支社・片山佐和子)


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2017年06月26日月曜日


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