岩手のニュース

<復興CSR>支援超えビジネスへ

秋冬物の毛糸の発売を前に、展示用の帽子を編む「東北クロッシェ村」の編み手ら=遠野市

◎トモノミクス 被災地と企業[53]第11部 明日(4完)たちあがる/自立

 ネパールの少数民族の女性は言った。
 「施しは受けたくない。誇りを持って、自立して生きたい」
 大阪市でフェアトレードの商品販売を手掛ける「福市」の高津玉枝社長(56)。かつて胸に刺さった言葉を東日本大震災の被災地でつむぐ。支援より、被災者が自立できるビジネスを。編み物を巡る小さな経済の物語が始まる。

 震災直後、つてのない東北に飛んだ。
 「途上国で作り手を育てた経験が生きる。肉親や家を失い、ふさぎ込む女性たちに仕事をつくろう」
 業務は編み物と決めていた。毛糸とかぎ針があれば始められる。自分のペースで仕事ができ、手を動かすことは癒やし効果もある。
 NPOを介して知り合った遠野市の農業佐々木盛子(もりこ)さん(67)たちが協力した。岩手、宮城両県の沿岸部で編み手を募り、11年7月スタートした。
 仕組みはこうだ。30〜80代の被災女性が統一規格のハートや花のブローチを編む。佐々木さんたちは事務局。福市が全品を買い取り、支援商品として売る。定価800円の半額が製作者に渡る。これまで7000万円を売り上げた。
 津波で自宅が全壊し、13年に夫を病で亡くした陸前高田市の編み手、境井トハ子さん(73)は「家でぽつんとしているより仕事があれば励みになる」と話す。
 自立への試練は半年後。高津社長が納入品の半数を返品した。「売り物であるからにはプロであってほしい」。品質管理を厳しくするとのメッセージだった。
 編み手の意識が変わった。いつしか被災地には、約50人の国内最大級の職人集団が育った。

 物語は進む。14年1月、福市のブローチ事業を引き継ぐため、佐々木さんや元NPO職員真山徳子さん(52)ら事務局5人が遠野市に合同会社「東北クロッシェ村」を設立した。クロッシェはフランス語でかぎ針の意味。外注先の編み手に仕事を割り振る。
 支援を看板にした商いは続かない。編み手は被災地以外にも広げた。経営理念は「東北の手仕事を守り、育てる」。
 売り上げに占めるブローチの割合は縮小し、大半は手芸メーカーから独自に請け負うようになった。生み出す商品に「支援」「復興」の文字はない。
 真山さんは言う。「私たちもメーカーも編み手も、被災地支援という意識はもうほとんどない。どんどん仕事を取りにいき、気持ち良くお金を頂く」
 被災者と支援者の関係を超えた対等なビジネス。初めは魚を施され、やがて魚の捕り方を覚えるように。ポスト復興に向けたトモノミクスの姿が浮かぶ。小さくても豊かな、持続的な経済の輪を築きたい。誇りと自立のために。(「被災地と企業」取材班)

[フェアトレード]1960年代の欧州発祥の取り組み。現地の生産組合などと連携した企業や団体が、生産者の労働環境や生活水準を踏まえ、適正に仕入れた原料や手工芸品を適正価格で長期的に取引する。日本では80年代後半に始まった。


関連ページ: 岩手 社会

2017年06月27日火曜日


先頭に戻る