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<大槌町民劇>父亡くした女性が脚本 志継ぐ

台本の読み合わせをする横浜さん(右)ら大槌町民劇団のメンバー

 岩手県大槌町の町民劇団の盛岡公演が8月にある。観客を笑いの渦に巻き込む舞台の脚本を手掛けたのは、東日本大震災の津波で父を亡くした町職員横浜千尋さん(27)。父が担った町民劇団のバトンを受け継ぎ、被災した人々に笑顔を届けようと筆を執った。
 横浜さんの父隆士さん=当時(50)=は生前、町民劇団の音響や照明を担当していた。稽古場は幼かった横浜さんの遊び場だった。
 京都の大学で演劇を学んでいた時に起きた震災で自宅は全壊。祖父母も犠牲になった。
 大学を卒業して戻った古里。「町のために何かしたいが、学んだことは役に立たない」と仮設住宅に引きこもる日々を経て2015年4月、町職員になった。新たに劇団をつくり、演劇で被災者を元気づけようという話が持ち上がり、脚本執筆を頼まれた。
 復興途上の人々に受け入れてもらえるのか不安もあったが、原案を聞いてすらすら物語と登場人物が浮かんだ。「やっと古里で居場所を見つけた」
 活動休止中だった父の劇団も協力して舞台制作が始まり、16年2月の初公演には横浜さん自身も出演。コミカルな芝居に町民約700人が大笑いした。
 今年3月に上演した2作目は田舎町の寂れた民宿で、Uターンした青年と周囲の人々が織り成す人情劇だ。主人公の青年にその父親が言うせりふは、自分と同じく帰郷後に悩む若者たちへのメッセージだった。
 「お前は東京に行って俺たちが見たこともないような世界を見て、それでもこの町を選んで戻ってきてくれた。それはすげえことだ。自信を持て!」
 盛岡公演は、高齢のため町に戻って鑑賞できないという内陸避難者の要望に応え、2作目を再演する。震災の風化が進む中、町民演芸が盛んな大槌をアピールし、町のファンを増やす狙いもある。
 横浜さんは「後を追うように大槌で演劇に取り組む自分を見てお父さんも安心しているはず。盛岡公演は観客が大槌弁に浸って古里と心でつながる場にしたい」と力を込める。
 町民劇団などが出演する「おおつちバラエティーショー」は8月27日、もりおか町家物語館で午前10時から。連絡先は大槌町コミュニティ総合支援室0193(42)8718。


2017年06月30日金曜日


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