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<人口激減の足音>遠隔診療で機能維持

常勤医が不在の皆瀬診療所。市内外の医師が応援に駆け付けて地域医療を維持している=湯沢市皆瀬

 秋田県の人口は4月1日現在で99万9636と、戦後初めて100万を割り込んだ。年間約1万3000人の減少ペースは衰えず、高齢化も進む。地域によっては医療の維持や伝統芸能の担い手確保、買い物弱者への支援などの課題が深刻化している。一方で、地域コミュニティーの維持へ向けて、住民や行政が動きだしたところもある。日々の生活に密接な、人口減を巡る動向を探った。

◎先行県・秋田のいま/暮らし編(1)医療

 「具合はどうですか」「注射をしますね」。湯沢市皆瀬の市立皆瀬診療所で、医師が今春導入した電子カルテを見ながら診察を続けた。

<常勤医ゼロ続く>
 2005年の市町村合併前は皆瀬村だった地区は、過疎が進む。唯一の医療機関の診療所に常勤医はいない。昨年3月に退職したからだ。代わりの人材をすぐに確保できないため、市は地元医師会に協力を要請。現在は市内外の医師5人が非常勤で外来や訪問診療に当たる。
 秋田県の人口10万当たりの医師数(2014年)は227.1人。全国平均の244.9人を下回る。地域の偏りも顕著で、県南の湯沢・雄勝地区は121.3人と特に深刻だ。
 皆瀬診療所の16年度の患者数は、外来診療日を週5日から2〜3日に減らした影響などで延べ3810人と、常勤医がいた15年度の同1万1529人から激減した。それでも市は「地域要望が強い」と存続させる考えだ。

<高齢者も減少へ>
 医師の負担軽減を図りながら、地域医療拠点の維持を図るための模索が始まった。その一つが、市が昨年12月〜今年2月に皆瀬地区を中心に行った遠隔診療の実証実験だ。
 市中心部にいる医師がタブレット機器を通して、約20キロ離れた在宅の患者を診察。実験には70〜90代の患者6人が参加した。患者の家族からは「安心感を得られた」と好評だった。
 診察に携わった医療法人経営の小野崎圭助さん(50)は月2回、地区への訪問診療を続ける。山間部の豪雪地帯のため、冬季は5人の患者宅を回るのに2時間半以上かかる。「広いエリアでは移動距離が問題。遠隔診療は使い方によっては有用だ」と指摘する。
 市は今月26日に遠隔診療を再開、本年度末まで続ける方針だ。
 地域医療を取り巻く環境は厳しさを増している。国立社会保障・人口問題研究所(東京)の推計によると、県内では早ければ20年を境に65歳以上の高齢者が減る局面を迎える。県医師会の佐藤家隆副会長は「高齢者も減れば、在宅医療を担う開業医の経営が成り立たなくなる。病院だけでは地域医療を守れない」と指摘する。

<医師招き学習会>
 地域医療を維持するには住民が受け身ではいけないと、積極的に医療を学び続ける市民団体がある。能代・山本地区を拠点に、09年に発足した「おらほの産科小児科を守る会」だ。
 会員は母親5人。代表を務める塾経営大谷美帆子さん(44)も3人の子どもを育てている。会は2カ月ごとに医師や助産師らを招いた学習会を開き、妊婦や親の悩みに向き合う。
 医師と住民を、どうつないでいくか。大谷さんは「子どもの減少により小児科医が減る懸念がある。住民も普段から地域医療に関心を持つ必要がある」と強調した。(秋田総局・渡辺晋輔)


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2017年06月27日火曜日


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