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手のひら地蔵で被災者癒やす 魂込め1000体超

制作した大きな地蔵を眺める平泉さん夫妻=宮城県川崎町
手のひら地蔵を心の支えにするきみのさん

 東日本大震災で亡くなった家族の面影を手乗り地蔵に重ね、毎日を過ごす被災者がいる。小さな笑顔から癒やしを受けたり、「話し相手」になってもらったりしている。被災者のために1000体以上制作した宮城県川崎町の彫刻家平泉正司さん(57)は「少しでも心の支えになればうれしい」と語る。
 東松島市の阿部きみのさん(76)は朝夕、自宅の仏壇に手を合わせる。視線の先にあるのは大津波の犠牲になった長男秀樹さん=当時(45)=の遺影と、背丈が8センチほどの石の地蔵だ。
 夫と次男と3人で暮らすきみのさんは震災前、土木関係の職に就く秀樹さんとも一緒に生活していた。「秀樹は小さい頃から親やお年寄りをいたわる優しい子だった」と思い起こす。
 震災の1カ月近く後、市内の体育館で秀樹さんの遺体と初めて対面した。タオルで顔の泥を拭くと、見慣れた柔らかい笑顔が浮かんだ。それ以降、最後の表情が忘れられず、胸がつぶれるような日々を送っていた。
 「手のひら地蔵を贈ります」。そんな新聞記事を見て2012年6月、平泉さんにはがきを送ると、地蔵が届いた。かわいらしくほほ笑む姿は幼い頃の秀樹さんにそっくり。きみのさんは「秀坊」と名付けた。
 それからの5年間、地蔵はずっと心のよりどころだ。「秀坊に愚痴をこぼすと悲しい顔をするし、うれしい報告をすると笑顔になる。自分の心を映しているだけかもしれないけど。平泉さんには感謝の言葉しかない」
 平泉さんはもともと大きな地蔵を作品として手掛けており、12年1月に手のひら地蔵の制作を始めた。「被災者のために何もできていない後ろめたさがあった」と振り返る。
 新聞で告知したり、県沿岸部の催しでちらしを配ったりすると、次々に要望が舞い込んだ。1体当たり1時間近くかけて仕上げ、無料で贈っている。
 地蔵を作り続けられたのは家族の支援も大きい。妻の和代さん(53)は、被災者から届くはがきやファクス、メールに親身になって返事を送った。
 「被災者の皆さんから感謝の言葉をもらうと、自分ももっと頑張って制作しようと思う」と平泉さん。要望があれば、まだまだ地蔵を彫り続ける覚悟だ。連絡はファクスで0224(84)6410へ。


2017年07月02日日曜日


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