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<東北の道しるべ>「準生産者」育てたい

家族と青々した田んぼを見つめる菊地さん(右)。「通訳者」として生産と消費の関係回復を目指す=6月16日、潟上市飯田川

 食べ物を作るだけが生産者ではない。買って支えるだけが消費者ではない−。生産と消費の新たな関係を求め、東北の若き農家が奮闘を続ける。受け継いだ伝承野菜の価値を発信し、農村と都市の相互交流をつくりだす。手間暇と安全の価値を認め合い、共に歩む1次産業を模索する。大量生産、大量消費で失った自然と人間の関係回復を託された「通訳者」として、新時代のモデルを切り開く。

◎若き「通訳者」 奮闘続く/潟上 菊地晃生さん(37)

 秋田県潟上市飯田川のファームガーデンたそがれ。園主の菊地晃生(こうせい)さん(37)が3万平方メートルの田畑で育てるコメと野菜は、田植えや種まきの前に買い手が決まる。
 「田んぼの生きものトラスト」「たそがれ畑の彩りトラスト」などと銘打ち、受注生産システムを設ける。コメの場合、1口(玄米30キログラム)2万5000円で購入者を募集し、申し込みの口数に応じて田植えをする。
 在庫を抱える心配がなく安定収入も得られる。「消費者と直接つながれることも魅力」と話す。スーパーなどに比べ価格は高いものの、無肥料・無農薬の農法が信頼され、目標の100口は毎年ほぼ売り切れる。
 菊地さんは2008年、江戸時代から続く農家の12代目を継いだ。化学肥料や農薬を多用する近代農法に疑問を感じ、環境に優しい不耕起栽培に取り組む。
 就農7年目の14年秋、ちょっとした「騒動」があった。収穫前に降り続いた雨で田んぼがぬかるみ、コンバインが使えなくなったのだ。手で稲刈りする以外に方法はないが、1人でやるとなると1カ月は要する。
 「稲刈りを助けてください」。菊地さんはわらにもすがる思いで、会員制交流サイト(SNS)で支援を呼び掛けた。すると翌日、「手伝いに来た」という人が現れ、その数は2週間で延べ200人にも達した。
 「生産現場に行って何か手伝いたかった」。ピンチを脱し、支援に感謝する菊地さんが耳にしたのは意外な言葉だった。「生産者と消費者は作ると買うの関係だけではない」と感じた。
 菊地さんは今、田畑の一角を「たそがれ野育園」にする。1区画10平方メートルを有料で貸し出し、「自分のコメは自分で作る」を最終目標に農業に親しみ、生きる力を養う場を提供する。
 「食べて支え、作っても支える『準生産者』のような消費者を育てたい」と菊地さん。食料の供給にとどまらない1次産業の広範な役割を強く意識している。


2017年07月07日金曜日


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