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<病棟のお坊さん>思いを次代へつなぐ

カンファレンスで医療チームの一員として患者情報を共有する金田さん(右から2人目)=東北大病院

 宮城県栗原市築館の僧侶金田諦晃(たいこう)さん(28)が、東北大病院(仙台市青葉区)緩和ケア病棟の臨床宗教師として採用され、1年がたった。東日本大震災を機に臨床宗教師となった金田さんは、医療者と共に患者の声に耳を傾ける。11日で震災から6年4カ月。心の痛みを和らげる方法を探っている。(報道部・上村千春)

◎生と死に向き合う(下)共鳴する心

 東北大病院(仙台市青葉区)で6月上旬、婦人科がんの患者と経験者約20人による茶話会があった。
 「私たちがしたことが死んだ後まで残るのならば 私は今を悔いのないよう生きていく 精いっぱい 力強く」
 緩和ケア病棟に勤める臨床宗教師金田諦晃(たいこう)さん(28)が、小学生の女の子の書いた詩を読み上げると、患者たちの目から涙がこぼれた。
 女の子は昨年8月、金田さんの自坊の通大寺(栗原市築館)であった「寺子屋合宿」に参加。緩和ケア病棟での金田さんの経験を聞き、感想を詩にしたためた。
 金田さんは合宿直前、緩和ケア病棟に入院する末期がんの男性を訪ねた。体の痛み、家族への思いを抱えた男性に「子どもたちに何か伝えたい言葉はありますか」と尋ねた。

 男性はしばらく沈黙した後で答えた。「人は人に助けられて生きている」。金田さんは合宿で、そのまま子どもたちに語った。
 その後、男性に合宿の写真を見せた。真剣な表情で聞き入る小学生の姿に、うなずいてくれた。金田さんを介して男性と子どもたちの心が響き合った。間もなく男性は息を引き取った。
 がん患者の茶話会で詩の朗読を終えた金田さんはこのことを紹介し、言葉を添えた。
 「男性は最期まで苦しんだが、子どもたちの生きる力になった。死に向き合う現場で生まれたものは、生につなげなければいけないと思う」
 勤め始めて1年がたち、金田さんは他の病棟から傾聴や講演の依頼を受けるようになった。緩和ケア病棟の畠山里恵看護師長は「穏やかな人柄で、患者さんや家族が話をしたい気持ちになる。大切なチームの一員だ」と信頼を置く。

 2012年度に東北大で養成が始まった臨床宗教師は今や150人を超え、全国の医療機関や介護、社会福祉の現場で活動している。ただ、医療施設ではほとんどがボランティアだ。
 雇用関係を結ぶのは松阪市民病院(三重県)、福岡聖恵病院(福岡県)など全国でわずか。大学病院は東北大しかない。
 公立病院は特定の宗教に寄らないことを原則とする上、予算にも余裕がない。実践宗教学寄付講座で講義を受け持つ東北大大学院文学研究科の谷山洋三准教授は「医療者が宗教者を必要だと思っても、組織が大きくなるほど配置は難しい」と指摘する。
 「だからこそ東北大病院が風穴を開けた意味は大きく、一つのモデルになり得る」。人々の生と死に向き合う教え子の金田さんの活動を見守っている。

<実践宗教学寄付講座>宗教者が講義、グループワーク、実習を通じて心のケアを約3カ月間学ぶ。布教や伝道ではなく、宗教者としての経験を生かし、相手に寄り添う方法を身に付ける。本年度から宗教者でなくとも受講可能な講座もできた。2016年2月に全国組織「日本臨床宗教師会」が発足、臨床宗教師を資格制度とするため準備している。


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2017年07月13日木曜日


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