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<病棟のお坊さん>震災機にケアの道へ

緩和ケア病棟の病室で患者の話を聞く金田さん=東北大病院

 宮城県栗原市築館の僧侶金田諦晃(たいこう)さん(28)が、東北大病院(仙台市青葉区)緩和ケア病棟の臨床宗教師として採用され、1年がたった。東日本大震災を機に臨床宗教師となった金田さんは、医療者と共に患者の声に耳を傾ける。11日で震災から6年4カ月。心の痛みを和らげる方法を探っている。(報道部・上村千春)

◎生と死に向き合う(上)傾ける耳

 看護師、医師との打ち合わせが終わり、金田さんは病室に入った。患者の目を見ながら静かに語り掛け、発する言葉に耳を澄ます。
 週3日勤める緩和ケア病棟は22床。自宅療養が難しくなったがん患者が症状や苦痛を抑える医療を受けている。最期を迎える場になることも多い。金田さんはここで、患者や家族と向き合う。
 「初めて会った時、自然と涙があふれてきた」
 こう話す肺がん患者の女性(47)は生い立ち、父母との思い出、死生観を金田さんに聞いてもらった。死を覚悟して不安でいっぱいだったのに、不思議と気持ちが落ち着いた。
 今は病状が安定し、望んでいた自宅療養ができるまでになった。「臨床宗教師、看護師、医師、リハビリスタッフが正方形のように私を支えてくれたおかげ」と感謝する。金田さんと作ったブレスレットをお守りにしている。
 金田さんは「患者は苦しみの中で一刻一刻を過ごし、支える医師も看護師も苦悩を抱えている」と語り、チームの一員として傾聴に徹する。

 栗原市築館で約500年続く曹洞宗・通大寺の長男。でも、当たり前のように寺を継ぐことはしたくなかった。そんな反発を抱えていた大学3年の時、東日本大震災が起きた。
 ひつぎが沿岸部から栗原市内の火葬場に次々と運び込まれてきた。ボランティアで駆け付けた僧侶たちが声を詰まらせ、お経を上げていた。
 「自分の人生を生きるだけでもつらいのに、なぜ苦しむ他人に寄り添おうとするのか」。自問が生まれ、大本山永平寺(福井県)で修行に入った。
 ある日、生と死に向き合いながら緩和ケアに取り組む医療関係者や僧侶に興味を持った。同じ頃、東北大大学院文学研究科に臨床宗教師を養成する講座があることを知った。

 修行に区切りを付けて受講生となり、実習で初めて終末期のがん患者に接した。話すことさえままならない患者を前に無力感に襲われた。
 養成講座設立に関わった父の諦応(たいおう)さん(61)に助言を求めた。
 「心身共に苦しい人を前にして揺さぶられている君の心は確かなもの。そこに居続ける勇気があるのが宗教者だ」
 臨床宗教師として被災者の声に耳を傾けてきた父の言葉が身に染みた。東北大の教員の勧めもあり、2014年9月に緩和ケア病棟でボランティアを始め、昨年6月に非常勤職員に採用された。
 東北大病院の井上彰緩和医療科長は「医療者は投薬などで苦痛を和らげようと考えるが、スピリチュアルなケアを求める患者にとって、臨床宗教師は医療者より大事な役割を担う」と強調する。

<臨床宗教師>被災地や医療機関、福祉施設などで布教を目的とせず、宗派や教義を超えて心のケアを提供する宗教者。岡部医院(名取市)の故岡部健医師が提唱し、東日本大震災をきっかけに2012年度、東北大大学院文学研究科に養成講座が開設された。今春までの修了生は152人。養成機関は全国の計9大学に拡大した。


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2017年07月12日水曜日


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