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<原発被災地の行方>生鮮品購入 車が頼り

スーパーで購入した生鮮品を軽トラックに積み込む黒木さん=南相馬市原町区

 東京電力福島第1原発事故の被災地で、暮らしに欠かせない買い物環境の整備が重い課題となっている。帰還した住民は利便性の低下に不安を募らせ、商店主は避難による顧客喪失に立ちすくむ。にぎわいは取り戻せるのか。福島の現状を探った。(福島第1原発事故取材班)

◎遠いにぎわい(上)戻らぬ日常

<いわきへ30分>
 買い物は週1回。気軽に買い足しはできない。先々の献立を考えながら売り場を巡る。
 福島県楢葉町の松本信子さん(67)は4月、いわき市の避難先から自宅に戻った。生活拠点は取り戻したが、食卓を守るのは容易ではない。いわき市まで、車で30分のスーパー通いが欠かせなくなった。
 原発事故前は地元スーパーが2店舗を展開していた。仮設商店街で営業を再開したが、客層は復興事業に携わる人たちが中心。決して広くない売り場を総菜など加工品が占め、生鮮品の品ぞろえは限られる。
 「以前は調理中に足りない食材に気付いても、3分あれば買いに行けたのに」。松本さんが嘆く。
 福島県内の避難指示は今春までに、第1原発が立地する大熊、双葉両町と帰還困難区域を除いて解除された。だが、9月で解除から2年となる楢葉町を含め、地域の小売店再開の動きは鈍い。
 復興庁などが帰還希望者を対象に昨年実施したアンケート(複数回答)では、商業施設の再開・新設や買い物支援を求める声が富岡町で68.7%、浪江町で51.7%に達した。買い物対策は急務だ。
 現状では60代以上が帰還者の多くを占める。車が運転できなくなれば生活が成り立たない現実を前に、住民は危機感を募らせる。

<近所の店休業>
 南相馬市小高区の山間部で暮らす黒木栄子さん(82)は昨年7月、避難指示解除に合わせて帰還した。徒歩圏内にあった商店は休業が続き、周囲では食材を調達できない。軽トラックで隣接する同市原町区のスーパーに出掛けている。
 黒木さんは元トラック運転手。それでも最近は注意力の衰えを実感する。相次ぐ高齢ドライバーの暴走事故が人ごととは思えない。運転免許の有効期限はあと2年。次回更新前に自主返納を考えている。
 家族の好みや献立を考えて食材を選ぶ。買い物は大事な暮らしの一部だった。「いざとなったら同居する長男にお願いするしかないかな」。黒木さんが寂しそうにつぶやく。

<足確保に苦心>
 避難をきっかけに家族が分散し、高齢者だけとなった世帯は少なくない。マイカーに頼る生活も、いずれは限界が訪れる。
 このため、県内の被災地は公共交通機関の整備と活用に知恵を絞る。
 南相馬市は大型タクシーで自宅と商業施設などを結ぶサービスを始めた。川内村では今春から無料巡回バスが運行されている。
 「帰還者の多くはまだ運転が可能な世代だが、将来はサ−ビスの需要が出てくるだろう」。南相馬市の担当者は買い物支援がより切迫すると予測する。


2017年07月20日木曜日


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