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<原発被災地の行方>大手誘致人材難の壁

「さくらモールとみおか」に入るヨークベニマル新富岡店=福島県富岡町

◎福島 遠いにぎわい(下)活路求めて

<好条件を提示>
 手をこまねいているだけでは地域の商業再生は望めない。東京電力福島第1原発事故の被災地で、自治体が先頭に立って大手誘致に活路を求める。
 福島県富岡町が町内に整備した大型商業施設「さくらモールとみおか」。6000平方メートルの店舗面積は域内最大規模を誇る。大手スーパーやホームセンター、ドラッグストアがテナントとして入る。今春、全面開業にこぎ着けた。
 町内の避難指示は今春、一部を除いて解除されたばかり。周囲に帰還困難区域が残る。町は30億円近くかけて施設を整え、3年間の賃料免除といった好条件を提示。出店のハードルを下げた。
 生鮮品から日用品まで買いそろえられるとあって住民の反応は上々だ。近隣自治体からも来客は絶えない。広野町の主婦根本菜穂子さん(49)は「車で25分程度。総菜も充実していて助かる」と笑顔を見せる。
 客足や売り上げは想定を上回るが、人材不足は大きな課題となった。帰還した住民が少ないことなどから、各テナントはパート従業員の確保に苦戦した。

<時給を1.5倍に>
 スーパーのヨークベニマル(郡山市)は、パートの時給を1250円という高水準に設定している。他地域の店舗の1.5倍程度に引き上げた。従業員の多くはいわき市などやや遠方から通っている。
 初期投資を抑えられたとはいえ、いずれは賃料などの経費が発生する。地元で安定雇用できなければ、採算悪化は避けられない。住民帰還の成否は小売り経営にとっても死活問題だ。
 ヨークベニマル新富岡店の渡辺利彦店長は「地元に戻りたいと思ってもらえる店にならなければ」と表情を引き締める。

<「二兎を追う」>
 被災地に商機を探る流通業者の動きも出ている。今春、一部地域の避難指示が解除されたのを機に、福島県浪江町には大手を含む複数の事業者から物件照会などが舞い込んでいる。
 地元の期待は当然、膨らむ。本間茂行副町長は「買い物環境の整備は帰還策そのもの。地元に戻った人の暮らしを支えたい」と誘致に意欲を示す。
 ただ、大手の進出は再起を目指す地元商業者を消沈させかねない。自治体には、足元のなりわい再生をにらんだかじ取りも求められる。
 町はこれまで、光熱費の補助などで地元業者の再開を後押ししてきた。「大手誘致との両立は困難。それでも町再生のため二兎(にと)を追うしかない」。本間副町長が決意をにじませる。


2017年07月22日土曜日


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