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<仙台いやすこ歩き>(63)手作りクッキー/故郷ハワイの「母の味」

 ひろせがわ〜ながれるきしべ〜♪にやって来た、いやすこ。目指したのは、霊屋橋のたもとにある「けんと」。
 「ここは仙台の手作りクッキーのはしりよね」と画伯と話しながら、昔懐かしいたたずまいのガラガラ戸を開ける。クッキーを焼く芳しい香り。渋いあめ色の和だんすなどが醸し出す古民家風の空間で、球形の地球瓶に入ったさまざまなクッキーたちが迎えてくれる。そして厨(ちゅう)房(ぼう)から、忙しい手を休めて代表取締役の平山ケントさん(58)が笑顔をのぞかせる。
 手渡された名刺を見て「わぁー、お名前をそのまま店名にしたんですね」と驚く2人に、「私はハワイ生まれの日系3世なんですよ」と、流(りゅう)暢(ちょう)というか、ごく普通の日本語で話してくれる。
 おじいちゃんおばあちゃんが日本語しかしゃべらなかったので、聞くのは幼い頃からOKで、話す方はハワイの大学で勉強したそう。仙台とのご縁は英会話学校の先生としてやって来たところから始まった。
 「仙台が気に入って、ここで商売がしたいと思ったんです」と平山さん。ちょうど東京にいる伯母さんが作ってくれたクッキーを周りの知り合いに食べさせたところ、おいしいと大好評。「それは母がいつも作ってくれた、ハワイでは当たり前のおやつでした」
 そして1988年、「手作りクッキーの店 けんと」を開く。今年でちょうど30年目だ。お店とつながる厨房をのぞかせてもらうと、一段とバターたっぷりの香り。バターは青森県産で、小麦粉と砂糖が基本材料、卵は入っているのと入っていないのがある…。そんな話をしながらも平山さんは、2分おきにオーブン内のクッキーの位置を変えて、焼き具合に気を配る。
 朝の9時半から夕方6時まで、1日に6〜8種類を作るそう。種類は全部で70以上! というからすごい。お店には常時30〜40種類のクッキーが並んでいて、最近、加わったものとしては米粉を使ったクッキーがある。こね方、焼き方など失敗を繰り返しながら、ようやく商品化したのだそう。夏限定商品として、ドライあんずをペースト状に練り込んだ「あんず」も。
 お薦めは? と聞いたところ、「好みを探してください。味ばかりでなく固さにも違いがありますから」とにっこり。
 クッキーの表面には焼き印が押されているが、それはせんべい用の焼き印だという。商品が入っている地球瓶も、東京のかっぱ橋道具街で買い求めたもの。「日本文化が好きなんです」という平山さんのクッキーは、包みも和紙だ。日本の手仕事への思いは、手作りクッキーに注ぐ愛情を映すかのよう。
 開業と同時に結婚したという平山さんは、仙台で良かったと話す。青葉山に広瀬川。仙台の最も仙台らしい場所で、故郷ハワイの味を作りつづけている。
 和紙に包まれたクッキーを胸に、2人は広瀬川の方へ。ゆかしき瀬音に耳を傾けながら、さっくり、ほろっのホームメイドクッキーを満喫。仙台のいやすこで良かった〜、と思う夏のひとときだ。

◎16世紀ごろ日本に伝わる

 クッキーは小麦粉に砂糖、卵、ベーキングパウダーなどを混ぜて焼いた焼き菓子である。広辞苑には、クッキーは「ビスケットに類する洋菓子。ビスケットより脂肪分が多いもの」と記されている。クッキーもビスケットも同じビスケット類で、その起源は1万年前と考えられている。
 イギリスでは主にビスケット、アメリカでは主にクッキーと呼ばれている。日本にビスケットが伝わったのは16世紀ごろで、鉄砲やカステラと共に持ち込まれた。当時、「乾蒸餅」などと訳された。
 クッキーとビスケットの違いについて、1971年に全国ビスケット協会がそれぞれの表示基準を明確にしている。それによると日本におけるクッキーは「手作り風の外観を有し、糖分、脂肪分の合計が重量百分比で40%以上のもので、嗜(し)好(こう)に応じ、卵、乳製品、ナッツ乾果、蜂蜜などにより製品の特徴付けを行って風味良く焼き上げたもの」とされている。(参考資料/「ビスケットのひみつ」学習研究社)

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 土地には、その土地ならではの食があります。自他共に認める「いやすこ(仙台弁で食いしん坊のこと)」コンビ、仙台市在住のコピーライター(愛称「みい」)とイラストレーター(愛称「画伯」)が、仙台の食を求めて東へ、西へ。歩いて出合ったおいしい話をお届けします。
=次回は21日掲載=


2017年08月07日月曜日


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