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<食味に懸ける>山形米戦略’17(上)新星 指導徹底 競争勝ち抜く

生産者にマニュアルの徹底を図る「雪若丸」の栽培研修会=6月、山形市の県農業総合研究センター

 2018年産からのコメの生産調整(減反)廃止を前に、山形県が食味の良さを前面に打ち出した産地イメージの構築を急いでいる。東北トップの高価格米「つや姫」の成功に裏打ちされたブランド戦略だ。しかし日本穀物検定協会の食味ランキングで、県産米の主力品種「はえぬき」の16年産は22年間維持してきた最高評価「特A」から「A」に転落、新品種「雪若丸」も「A」にとどまり、関係者は危機感を強める。東北の銘柄米の将来を占う山形のコメ戦略を追う。(山形総局・宮崎伸一)

 「『つや姫』の弟として愛されるコメになってほしい」。吉村美栄子知事はあいさつの中で、新品種への期待を率直に語った。
 7月中旬、山形市のホテルで開かれた「雪若丸」のロゴマーク発表会。マークは、ご飯が盛られた四つの茶わんが円卓に載っているデザインで、色は「つや姫」のロゴマークと同様に赤と緑が基調だ。
 「雪若丸とつや姫が同じ棚に並べば、きっと目立つ」。県農林水産部の白田洋一部長の目にも、マークは好印象に映ったようだ。

<粒感と粘り特徴>
 雪若丸は、しっかりした粒感と適度な粘りが両立した「新食感」がセールスポイント。魚沼産コシヒカリ(新潟)に迫る高値が定着した「つや姫」に次ぐ上位2番手の価格帯を狙って、18年産で本格デビューする予定だ。
 だが、参考品種として出品した16年産食味ランキングの評価は「特A」を逃し、「A」にとどまった。
 生産調整の廃止を前に、各産地は有力な新品種を相次いで投入する。17年産には「金色の風」(岩手)「新之助」(新潟)。18年産には「だて正夢」(宮城)と、前評判の高い品種がめじろ押しだ。
 市場で埋没しないためには、本年産での「特A」獲得が必須条件。県は「雪若丸」の特A獲得に向け、生産者へのきめ細かな指導を徹底している。
 6月に県農業総合研究センター(山形市)で2回目の栽培研修会を開催。1回目の研修会(3月)では配布した栽培マニュアルに基づき、参加した生産者ら約100人に茎数を増やすための追肥時期や水の管理などを細やかに指導した。
 生産者の士気も高い。試験栽培に加わって2年目の奥山喜幸さん(42)=河北町=は「雪若丸の持ち味を引き出すため、迷ったときは必ずマニュアルを確認する」と言う。10日ごとに茎数や草丈などのデータを採り、マニュアルの基本指数と見比べている。
 県は収穫前の今月下旬にも3回目の研修会を開き、登熟期の水管理や地区別の収穫適期などを具体的に指導、助言する予定だ。

<専門誌も高評価>
 農林水産省によると、17年産米で産地、品種を明記して流通させることができる産地品種銘柄は753銘柄。このうち、41銘柄は新たに設定された銘柄だ。主食用米の需要が減退する中で、各産地はよりブランド力のあるコメで生き残りを図ろうとしている。
 多くのライバルに取り囲まれてスタートラインに立つ「雪若丸」に、競争を勝ち抜く力はあるのか。
 専門誌「月刊食糧ジャーナル」の鶴田裕編集部長は「大きな粒で食べ応えがある。今までにない食感は新しい消費者を掘り起こす可能性があり、魅力的な品種だ」と評価する。
 品種の力を信じ、最大限に可能性を引き出す。行政、生産者一体となった挑戦が続く。


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2017年08月06日日曜日


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