岩手のニュース

<東北の道しるべ>どぶろくで世界に挑む

真剣な表情で仕込み中のどぶろくをかき混ぜる佐々木さん

 「どぶろく」で世界に挑む若き職人が遠野市にいる。市内の老舗民宿の4代目、佐々木要太郎さん(36)だ。10年以上の歳月をかけて磨き上げた味が評価され、昨年2月からスペインや香港の高級レストランが扱うようになった。さらなる海外展開を見据え、コメ農家の支援に乗りだした。
 輸出している「水もと仕込み」は、天然酵母と乳酸菌の力を最大限生かし切る独自製法で醸す。優しい酸味と深いうま味、抜群の切れが一体となり「エレガンスさとバランスの良さ」(佐々木さん)を実現した。
 遠野市が「どぶろく特区」に認定されたのは2003年。これを機に佐々木さんも醸造を始めて04年6月、23歳の誕生日に初めて自作のどぶろくを宿泊客に提供した。ところが−。
 「ばかにするな。勉強不足すぎる」。激しく叱責(しっせき)された。相手は酒どころ新潟県の杜氏(とうじ)だった。
 「何も言い返せなかった」と佐々木さんは振り返る。「深く考えずに造り、おいしいと思えないまま出した自分を恥じた」
 どぶろくと真剣に向き合うことを決意し、モヒカン頭を丸めた。一日2箱吸っていたたばこもやめた。
 以来、民宿業務の傍ら奈良県の酒蔵に弟子入りするなど理想のどぶろく造りに心血を注いだ。日本古来の発酵技術の奥深さに魅了され、職人の技を身に付けようと努力を重ねてきた。
 原料米は遠野原産の「遠野1号」で、佐々木さんと20〜30代の弟子ら4人が無農薬・無肥料で育てている。農作業の大変さを知るにつれ、農家が正当に評価されていないとの思いが強まった。
 自分たちと同様に農薬や肥料を使わないコメ農家の経営を支援したいと考え、適正価格で原料米を仕入れる取り組みを始めた。まずは盛岡市の農家と連携し、各地に広げる計画だ。
 「遠野でも一つのことを深く突き詰めれば、世界と渡り合える」と新たな海外展開を練る佐々木さん。自分と仲間たちの挑戦を地元の若い世代に知ってもらい、後に続いてほしいと願っている。
 「どぶろくは長い歴史の中でほとんど改良されておらず、可能性が広がっている。世界に誇れるお酒として遠野から発信したい」
 水もと仕込み(720ミリリットル)は2700円。連絡先は佐々木さんが営む宿泊施設付きレストラン「とおの屋 要」0198(62)7557。


2017年08月14日月曜日


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