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<天のつぶ>ブランド化 猪苗代が挑戦 「究極のすし米」として海外へも

天のつぶの田んぼで除草作業をする土屋さん=1日、福島県猪苗代町

 福島県のオリジナル米「天のつぶ」の生産・販売戦略が問われている。ブランド力を高めるか、外食など業務用に特化するか−。悩める県や農業団体を尻目に、独自路線を突き進む地域がある。種をこっそり手に入れ、高級ブランド化を図り、輸出ルートまで構築した同県猪苗代町を取材した。(福島総局・高橋一樹)

◎すし米食味最高賞 輸出ルート構築

 標高520メートル。磐梯山を望む真夏の猪苗代湖畔はやや涼しい。
 「地域の特性をつかめばコメはおいしく育つ」。天のつぶが順調に育つ田んぼで、コメ農家の土屋勇雄さん(56)が草刈りを徹底する。
 東京電力福島第1原発事故から間もなく6年半。風評は完全には払拭(ふっしょく)できないが、「福島、猪苗代の名前を冠したコメを堂々と売りたい」と力を込める。
 涼しい猪苗代町は春先も気温が低い。会津地方特産のコシヒカリ栽培に適していない。原発事故後は風評という敵も加わった。
 産地間競争をどう生き残るか−。町と地元農協が目を付けたのが、デビュー年が原発事故と重なった天のつぶだった。
 ただ、想定された栽培地域は標高300メートル以下。県は品質を保証できないとして猪苗代町での作付けに反対した。それでも諦めず…。「こっそり種を仕入れた」。町農林課の小板橋敏弘係長は作付けを開始した2011年当時を振り返る。
 目指したのはブランド化だ。初年度は土屋さんら3人が試験栽培を担当。地域に根付く減肥料・減農薬の「エコ栽培」でも、10アール当たり600キロを収穫できた。手応えは十分だった。
 14年以降は出荷時の独自基準を設定。通常より大きい2ミリのふるいに残る大粒のコメを色彩選別機に通すなど品質管理を徹底した。
 当初から海外戦略も展開した。「冷めても粒がしっかり」という特長を生かすため、「すし米」として欧州や中東の見本市に出品。昨年の「すし米コンテスト国際大会」(米・食味鑑定士協会主催)では最高の特Aを受賞した。
 「究極のすし米」(ザ・アルティメット・スシ・ライス)をうたって売り込んだ結果、アラブ首長国連邦やカタールへの輸出を実現。ドバイなどのスーパーに「日本産高級米」として並ぶようになった。
 町内の生産者は約50人でコメ農家の1割未満。作付面積も44ヘクタールにとどまる。今後は規模拡大による世界ブランド確立を目指す。
 「世界で選ばれる高級米に育てる」と小板橋係長。土屋さんは「自分たちで考えて売っていく時代。猪苗代が先進地になる」と語り、その柱に、天のつぶがなると信じている。


[天のつぶ]福島県が1995年から、「奥羽357号」と「越南159号」を交配して開発を進めた。デビューは2011年。普及対象は標高300メートル以下の平地。粒は大きくて硬く、収量はコシヒカリなどより多い。草丈が低く倒れにくい。17年の県内の栽培面積は約5300ヘクタールを見込む。


関連ページ: 福島 経済

2017年08月15日火曜日


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