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<米国流 直売経済>消費者との近さ 強み

夕方に会員に配る野菜を収穫するルーシーさん(右)ら=6月14日、米ニューヨーク州のイサカ地域

 農業の大規模化、産業化への対抗手段として米国で誕生したCSA(地域支援型農業)が進化を続けている。生産者と消費者が直接つながる取引手法は肉類、魚介類、加工食品に広がり、各地で食の生産基盤と地域経済を支える。東日本大震災後、販路の回復に苦しむ被災地に応用できないか。日米教育委員会の2016年度フルブライト奨学生として調査、取材した米国CSAの今を報告する。(報道部・門田一徳)

◎CSA先進国の今(2)活路

<作物を分担栽培>
 決め手は負担の軽減だった。米ニューヨーク州イサカ地域で「スティック・アンド・ストーン農場」を経営する張〓樵(チャンイーチャオ)さん(43)は熟考の末、友人の誘いに乗った。
 「一緒にCSA(地域支援型農業)をやろう」。複数の小規模生産者が共同で野菜を会員に直売する。張さんら3生産者は2005年、「フルプレート農場集団」を設立した。
 当時、CSAは農場ごとの取り組みが一般的で、毎週10種類近くの野菜を会員に提供しなければならなかった。「多品種栽培に抵抗があったけど役割を分担すれば負担は軽くなる」。共同運営は張さんのCSAに対するハードルを下げた。
 フルプレート農場集団には今季、7生産者が参画する。消費者であるCSA会員は約500人。張さんはトマトやカボチャ、ズッキーニなど、他の生産者たちはサラダ用の野菜、ニンニクなど得意な作物を分担して育てている。

<天候リスクも減>
 年会費制のCSAは農場に安定した収入をもたらした。余剰分の野菜は、卸売りやファーマーズ・マーケットで販売している。
 共同運営によって、天候不順などのリスクも軽減された。昨年夏、イサカ地域は深刻な干ばつに見舞われた。フルプレート農場集団の農作物被害は深刻だったが、影響の少なかった張さんの農場の野菜を多くCSAに回すことで、他の農場の被害を相殺できた。
 米国には約210万軒の農場があり、その9割は小規模生産者だ。農地面積が1000エーカー(約405ヘクタール)を超える大農場は、わずか8%にすぎない。
 「カリフォルニアで2000エーカーもの農地でレタスだけ栽培している生産者と、作業効率を競おうなんて誰も思わない」

<要望に迅速対応>
 CSA専用の会計ソフトウエア会社を経営するサイモン・ハントリーさん(34)は、直接販売が小規模生産者に選ばれる理由を解説する。強みは消費者との距離の近さ。新鮮かつ食べ頃の野菜を提供でき、消費者ニーズへの素早い対応もできる。
 張さんの農場の面積は約100エーカー(約40ヘクタール)。米国の農場平均の4分の1にも満たない。半分以上は地力回復のためにクローバーなどを植えており、実際に野菜を育てているのは40エーカー(約16ヘクタール)程度になる。
 6月中旬の早朝、農場では張さんの妻ルーシーさん(35)たちがCSA会員向けの野菜の収穫に汗を流していた。
 「会員の人たちはスーパーでも流通業者でもなく、私たちを支えてくれている。その期待に応える作物を届けるのが私たちの責任だと思う」。この日の夕方、CSAの受け取り会場にルーシーさんたちが朝に収穫した野菜が並んだ。

(注)〓は逸の旧字体


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2017年08月15日火曜日


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