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津波に耐えた桜並木伐採 二転三転、住民にしこり

60本のうち17本の桜を残す計画が示された説明会=7月28日、気仙沼市

 宮城県気仙沼市を流れる大川支流の神山川(6.9キロ)沿いにあり、東日本大震災の津波に耐えた桜並木。県の河川堤防建設に伴う全60本の伐採計画は地元の反対を受けて二転三転し、17本を残す案で7月に住民と合意した。賛否を巡るしこりを地域に残したまま、9月にも工事が始まる。

 「津波が土手を越える不安がある。17本は残ることになった。歩み寄りが必要だ」。7月28日に市内であった住民説明会で「神山川の桜保存を望む市民の会」の川崎幸雄代表が呼び掛けると、川沿いの住民からは早期の堤防建設を望む声が上がった。
 桜並木は神山川左岸の約600メートル。県は2016年3月の説明会で、津波の越流を防ぐ海抜3.7メートルの堤防を築くため、全ての桜を秋に伐採する案を示した。
 これに対し、川崎代表らは桜の一部保存を求める4700人分の署名を提出。8月になって県は、震災後の地盤隆起を考慮して5本を残すと説明し、伐採時期を先延ばしした。
 さらに、今年6月には堤防の区間を短縮できたとして、17本を残す方針を明らかにした。
 県の「譲歩案」に、大半の住民が堤防の建設賛成に回ったが、桜の一部保存に理解を示す人ばかりではない。
 市内の会社経営の男性(70)は反対を貫く。「津波に耐えた桜を見ようと全国各地から気仙沼を訪れるはずだ。地域の活性化のためには全て残す必要がある」
 津波に遭いながら花を咲かせた桜の伐採は広く関心を集めた。「銀河鉄道999」などの作品がある漫画家松本零士氏も県の計画を批判し、桜を題材にした絵本を出版する。
 復興の象徴としての完全保存か、安全確保を優先した次善の策か。意見の違いは住民の間にあつれきを生んだ。
 28日の説明会に出た50代の女性は「心一つに復興に向かっていた住民の心がばらばらになった。計画を二転三転させ、対立を招いた県の責任は重い」と憤る。
 県は反対住民の声を踏まえ、伐採した桜の移植も検討する。「丁寧に議論を進めてきた。命を守るために堤防を築く県の方針は変えられない」。気仙沼土木事務所の担当者は強調する。
 市幹部は「市民の気持ちが分断されることを最も危惧していた。地元の意見を聞かずに伐採を提案したこと自体に問題がある」と県の姿勢を批判した。


2017年08月16日水曜日


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