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<米国流直売経済>草の根 成長を後押し

関係者が技術や知識を共有したジャストフードの年次会議=3月12日、ニューヨーク市

 農業の大規模化、産業化への対抗手段として米国で誕生したCSA(地域支援型農業)が進化を続けている。生産者と消費者が直接つながる取引手法は肉類、魚介類、加工食品に広がり、各地で食の生産基盤と地域経済を支える。東日本大震災後、販路の回復に苦しむ被災地に応用できないか。日米教育委員会の2016年度フルブライト奨学生として調査、取材した米国CSAの今を報告する。(報道部・門田一徳)

◎CSA先進国の今(6)普及

<政府も巻き込む>
 「支援組織の努力がなければ今日の成長はなかった」。生産者が食材を消費者に直接販売するCSA(地域支援型農業)は米国で1980年代後半に始まった。長年普及に携わる著述家で農場主のエリザベス・ヘンダーソンさん(74)が、感慨深げに振り返る。
 生産者と消費者の教育、有機栽培認証、農場検索サイトの開設など、さまざまな組織、団体の草の根的な取り組みが、CSAを年間売り上げ約2億2600万ドル(約249億円)の流通形態に導いたとヘンダーソンさんは評価する。
 政府も動いた。「生産者を知ろう、食べ物を知ろう」。オバマ政権だった2009年、CSAなど直接販売を後押しする地産地消キャンペーンを始めた。

<市民に魅力説く>
 1995年に活動を始めたNPO「ジャストフード」は、ニューヨーク市にCSAを広めた立役者だ。
 出発点は食に関わる二つの社会問題だった。販路が見つからず経営に行き詰まる地方の小規模農場と、新鮮、安全な食材との接点が乏しい都市住民。「CSAが両者をつなげられないか」。ジャストフードの挑戦は、ここから始まった。
 当時、ニューヨーク市に進出したCSA農場はわずか1軒。市民にほとんど知られていなかった。NPO職員は都市部の地域コミュニティーや近郊の農場に足しげく通い、CSAのメリットを一から説いた。
 20年に及ぶ草の根の歩みが、ニューヨーク市に約130カ所のCSAの受け渡し拠点を築き、年間約5万1000人の台所を支える組織へと成長させた。都市と地方をつなぐ取り組みは、全米各地に波及した。
 ジャストフードのCSA担当エミリー・ミヤウチさん(31)は日系3世で、東日本大震災からの復興に強い関心を寄せる。被災地でCSAを普及するには「生産者と消費者の教育に献身的に取り組む支援組織が不可欠だ」と指摘する。

<低所得者層にも>
 ジャストフードは4年ほど前、支援の軸足を低所得者層に移した。「新鮮で安全な食材は街に増えたが、最も必要とする人たちに届いていなかった」。委員長のカレン・ワシントンさん(63)は反省を込める。
 今年3月、ニューヨーク市のコロンビア大でジャストフードの年次会議が開かれた。テーマは「コラボレーション」。生産者や消費者、支援関係者ら約5000人が参加した。
 ワシントンさんは会議冒頭のあいさつでこう訴えた。「新鮮な食材を誰もが手に入れられる社会に変えなければならない。知識や技術を分かち合い、あしたから行動を始めよう」
 地域的な普及から低所得者層への浸透へ。多様性を尊重する米国のCSAは、新たな段階に進もうとしている。


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2017年08月20日日曜日


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